将棋の第77期名人戦順位戦C級1組は5日、東京都と大阪市の将棋会館で指され、最年少プロ、藤井聡太七段(16)が都成竜馬五段(29)に126手で勝ったが、2期連続昇級を逃した。他力の昇級条件「勝ち星で並ぶライバル3人のうち2人が敗戦」がクリアできなかった。師匠、杉本昌隆八段(50)の同時昇級はならなかった。順風満帆だった棋士人生で初めての「つまずき」となった。

   ◇   ◇   ◇

幸運は舞い込まなかった。順位戦C級1組の最終局。藤井が最後の一戦に全力を注ぎ込んだ。鋭い攻めで中盤からリードを広げ、相手を圧倒した。昇級への絶対条件「自身の勝ち」はクリアしたが、他力の「ライバル3人のうち2人が敗戦」という厳しい条件を満たすことができなかった。

終局後、昇級を争った師匠と、船江恒平六段(31)の勝利を知らされると「前回(順位戦)に負けているので仕方がなかったのかな」と淡々と話した。

同組の最終局を迎える前は藤井、杉本、近藤誠也五段(22)、船江の4人が8勝1敗で並ぶ大混戦。B級2組への昇級枠は2人だけ。上位が同じ戦績で並んだ場合、昇級は「順位」が優先され、プロ2期目の藤井の順位は31番。他の3人はいずれも藤井より上位(近藤6番、杉本7番、船江14番)だった。

棋士人生で初めてのつまずきだ。史上最年少プロとして14歳でデビュー。史上最多の29連勝を達成し、昨年は朝日杯将棋オープン戦で最年少優勝。今年2月には同棋戦で史上2人目の2連覇を果たした。

昨期の順位戦C級2組では10戦全勝で1期抜けし、C級1組に上がった。今期も白星を重ねたが、先月の近藤戦に敗れ、順位戦で初黒星を喫し、前期からの連勝は18で止まった。自力昇級の可能性が消滅した。

最後の望みをかけたが、届かなかった。羽生善治九段でさえ、C級2組、1組を抜けるのにそれぞれ2期かかっている。「また来期も一局一局を積み重ねていければと思います」。つまずいても、立ち上がればいい。【松浦隆司】

▽藤井の師匠で、同じC級1組からB級2組への昇級を決めた杉本昌隆八段(50) 棋士としては最高。師匠としては複雑。藤井は近いうちに昇級するのは間違いない。一足先に待っている。もう1度、B2で昇級争いがしたい。