将棋の最年少プロ、藤井聡太七段(16)が逆転勝ちで本年度最後の対局を終えた。

27日、東京・千駄ケ谷「将棋会館」で行われた第32期竜王戦4組準々決勝で、中田宏樹八段(54)と対戦。劣勢に立たされながらも、終盤の寄せ合いでひっくり返した。これで未放映のテレビ対局を含め、今期は45勝8敗、8割4分9厘で年間勝率1位を確定させた。歴代3位の高勝率で、2年連続での1位は4人目。昨年度の8割3分5厘6毛(61勝12敗)を上回る好成績を挙げた。

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金2枚、銀1枚で玉をガッチリ守った中田陣を攻略した。91年の王位戦に挑戦したベテランの緩急自在な攻めをしのぐ。秒読みに追われながら盤面に集中し、攻めの拠点を見つける。最後の最後で勝利をもぎ取った。「苦しい展開だった。敗勢だと思っていた」と振り返る。昨年度末は王将戦予選で井上慶太九段に敗れたが、今回は勝ち切った。

今期、一時は1967年(昭42)度に中原誠(引退)が記録した年間最高勝率の8割5分5厘(47勝8敗)を上回る勢いだった。先月の順位戦C級1組の近藤誠也五段(段位は当時)戦、前局の棋聖戦予選の久保利明九段戦で星を落とし、記録更新はならなかった。

とはいえ、歴代3位の最高勝率。しかも、2年連続の勝率1位は立派だ。73年度に将棋界で記録部門賞が制定されて以来、2年以上の連続達成者は80~81年度の田中寅彦、86~89年度の羽生善治、15~16年度の斎藤慎太郎に次いで4人目。2年連続で勝率8割超えは、87~88年度の羽生(それぞれ8割2分、8割)以来となる。今回は、あこがれの羽生も、昨年度の自身の勝率をも上回った。「1局1局頑張った結果。前年度の勝率も上回れて、うれしいと思う」と喜びをかみしめた。

敗れたなかには菅井竜也七段、斎藤慎太郎王座らタイトル獲得経験者がいる。実力差を痛感させられた。一方で渡辺明棋王を決勝で下して朝日杯を連覇するなど、目指すタイトル獲得に向け、少しずつではあるが近づいている。前局の久保は、「トップ棋士」と藤井のことを評したほどだ。19年のテーマは「進歩」。サイン色紙にはこの2文字を揮毫(きごう)する。「次も全力を尽くしたい」。大きな壁が待ち受けるが、着実に1歩ずつ進むしかない。【赤塚辰浩】