新天皇陛下(59)が5月1日午前0時、皇太子から即位された。戦後生まれの初の天皇。前天皇陛下は4月30日に退位し、上皇となった。最後の国事行為となった「退位礼正殿の儀」で、前陛下は「象徴としての私を受け入れ、支えてくれた国民に心から感謝します」と、最後のお言葉を述べた。国民の象徴たる天皇像を、国民に寄り添いながら追求した在位中の思いが、込められた。30年あまり続いた「平成」は終わり、「令和」の時代が幕を開けた。

前天皇陛下は、退位前の最後の国事行為となる「退位礼正殿の儀」で、最後のお言葉を述べた。常に国民に寄り添い続けた30年間を象徴するように、最後も国民への思いを口にした。

国民代表として安倍晋三首相が「いかなる時も国民と苦楽をともにされた。国民に寄り添い、明日への勇気と希望を与えてくださった」とあいさつ。これを受け、前陛下は「天皇としての務めを、国民への深い信頼と敬愛をもって行い得たことは幸せなことだった」とした上で「象徴としての私を受け入れ、支えてくれた国民に心から感謝します」と述べた。ひとことひとことが重い響きを持った。

89年1月、昭和天皇の崩御に伴い即位。その時も、「いかなる時も国民とともにあることを念願された(昭和天皇の)御心を心としつつ、皆さんとともに日本国憲法を守り、これに従って責務を果たす」と誓った。現憲法下で初めて象徴天皇としての即位。象徴として、国民との向き合い方を模索し、国民とともに歩んだ30年だった。

即位後まもなく、全国への訪問を希望。退位までに、47都道府県を「2巡」した。地震や自然災害の被災地では、前皇后美智子さまとともにひざをつき、語りかけた。国民とともにある天皇像そのものだった。

自らの戦争経験を踏まえ、国内外で戦争犠牲者も追悼。最後のお言葉には、令和の時代が平和であることへの願いも込められた。

お言葉の後、退出される際、前陛下は後ろを歩く美智子さまに優しく手を差し伸べた。その後、宮内庁幹部らからあいさつを受けた際、関係者によると、「令和の時代も同じように務めてほしい」という趣旨の言葉と謝辞があったという。

これに先立つ最後の宮中祭祀(さいし)となった「退位礼当日賢所大前の儀」では、古式装束「黄櫨染袍(こうろぜんのほう)」姿で、皇居・宮中三殿の廊下を歩んだ。直前に雨もやみ、厳かな空気が漂った。

天皇の退位は、江戸時代の光格天皇以来202年ぶり。今回は17年6月に成立した、前陛下一代限りの退位を認める皇室典範特例法に基づく。テレビの生中継を通じ、国民も見届けた。

退位に伴い、前陛下は上皇、前皇后は上皇后となった。新陛下と前陛下による「二重権威」が生じないよう、前陛下は今後、一切の公務から退く。かつて自ら「旅」に例えた30年を凝縮したお言葉とともに、前陛下は「全身全霊」の役割を静かに終えた。