将棋の最年少プロ、藤井聡太七段(16)は9日、大阪市の関西将棋会館で指された第69期王将戦1次予選4組の準決勝で北浜健介八段(43)を破り、「令和」になって初の対局を白星で飾った。数々の最年少記録を更新中の新星は「いいスタートを切れた」と笑顔。令和最初の目標は最年少タイトル獲得だ。

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新時代になっても藤井の切れ味は変わらない。終盤は、一直線の攻め合い。最終盤はすべてを読み切ったように完勝した。「難しい展開だった。攻め合いにいくかどうか判断がつかなかったが、踏み込んでいった」。正確な読みで、令和初戦の白星をもぎ取った。

終局後、藤井は「いいスタートが切れた」と笑顔を見せ、令和への強い思いを口にした。「平成の30年間を第一線で活躍された羽生(善治)先生のようには難しいが、自分も実力を付けて新しい時代に長く活躍できるようにしたい」。

将棋界は、平成最後に20代の強豪が台頭し「羽生1強」から勢力図が変わった。昨夏には、8大タイトルを8人の棋士が保持する「群雄割拠」の状態も生まれた。新時代の中心になろうとしているのが藤井だ。トップ棋士は最年少プロの猛烈な追い上げを意識する。

このゴールデンウイーク10連休は将棋の研究に多くの時間を費やすことができた。鉄道好きで知られるが、最近は新しい趣味もできた。パソコンだ。平成時代の後期、将棋界に最も大きな影響を与えたのが人工知能(AI)の進化だった。いまでは多くのプロ棋士がAIを将棋研究に取り入れている。藤井も例外ではない。

日々の研究の中で、パソコンの性能にも興味を持つようになった。令和元年、「藤井将棋」をバージョンアップさせるために自宅のパソコンを買い替えるつもりだ。藤井が目指すのはAIから得られる知識をうまく生かしながら、その時代にあった「藤井スタイル」を作り上げていくことだ。令和の最初の目標はタイトル獲得となる。タイトル戦出場の最年少記録を持つのが屋敷伸之九段(47)で、挑戦は17歳10カ月、獲得は18歳6カ月。まだ時間はある。

4月末、東京都内で行われた将棋界のレジェンドたちが集まったイベント「棋才 平成の歩」に出演した。トークショーの「令和に予想される将棋界のビッグニュース」の設問では、憧れの存在で、同じく14歳でデビューした谷川浩司九段から「最年少タイトル、1年くらいで結果が出せるかな」と振られると、「はい」。令和の「新時代」を築く。【松浦隆司】

 

 完敗した北浜は終局後「強い」と一言。対藤井戦は3連敗となった。1戦ごとにバージョンアップする高校生プロに「途中、ちょっと攻め込みすぎて、どう反撃すればいいのか分からなくなった。最後はチャンスが来たような気がしたが、きっちり合わされた」と舌を巻いた。