千葉県野田市立小4年の栗原心愛(みあ)さん(当時10)が1月に自宅浴室で死亡した虐待事件で、父勇一郎被告(41=傷害致死罪で起訴)の暴行を制止しなかったとして傷害ほう助罪に問われた母なぎさ被告(32)の初公判が16日、千葉地裁で開かれた。憔悴(しょうすい)しきった様子で、心愛さんについて聞かれた時、涙声になる場面もあった。起訴内容を「間違いありません」と認め、検察側は懲役2年を求刑。即日結審した。判決は6月26日。

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なぎさ被告はベージュのセーターと黒いパンツ姿。とぼとぼと歩いて入廷した。最初は背中を丸めて手をひざに置き、目をつぶり、表情を変えなかった。

起訴状によると、今年1月22~24日、勇一郎被告は心愛さんに暴行を加え、十分な食事や睡眠を与えず、衰弱させ、死なせたとしている。なぎさ被告は勇一郎被告の指示で食事を与えず、暴行を制止せずに手助けしたとしている。

検察側は冒頭陳述で、勇一郎被告は、県柏児童相談所が心愛さんの一時保護解除後、18年7月ごろ、再び心愛さんがけがを負うほどの暴行を加えるようになったと指摘。「暴行を止めようとしたこともあったが、警察に通報しなかった」となぎさ被告を非難した。

今年1月、なぎさ被告が勇一郎被告にLINEで「心愛が勝手に冷蔵庫を開けていた。ありえない。マジで何様なの。むかつくね」と報告していたことも明かされた。検察側から理由を聞かれ、心愛ちゃんに「ストレスをぶつけたところもあった」と振り返った。

また、なぎさ被告が年末年始、虐待を止めようと「通報する」と言うと、逆上した勇一郎被告に馬乗りされ、ひざかけを口の中に突っ込まれたという。過去に何回かDVを受けており、勇一郎被告に対し「何か言われて断ったら怒られる」と、恐怖心をのぞかせた。

弁護側は起訴内容を争わないとし「勇一郎被告がなぎさ被告を支配する関係にあった」と述べ、虐待の意思はなかったと主張した。

一方で、両親に説得されて11年に離婚したが、17年に再婚したのは、勇一郎被告の携帯に「元気ですか」と自ら連絡をしたことがきっかけだったという、検察側は「好きだという思いも、勇一郎被告の(心愛さんが死に至る)数日間の暴力を容認した」と指摘した。

沖縄県から野田市に転居した17年、心愛さんが一時的になぎさ被告と離れて暮らしていた時のことを振り返り、「毎日地獄だった」と打ち明けられていたという。検察側は論告で「母としての責任を放棄した悪質な犯行」と言及した。

なぎさ被告は心愛さんについて「やさしくて…。いつも笑顔で明るい子でした」と話すと、声を詰まらせた。一方、弁護側、検察側、裁判長から、心愛さんに言いたいことを聞かれたが、いずれも無言だった。勇一郎被告の裁判員裁判の期日は未定。【近藤由美子】