28日午前7時40分ごろ、川崎市多摩区登戸新町の路上で、私立カリタス小学校(多摩区)のスクールバスを待っていた児童17人、大人2人の計19人が男に次々と刃物で刺された。小学6年の女児(11)と、別の児童の保護者の男性(39)が死亡し、3人が重傷。男は50代で自分で首付近を刺し、死亡が確認された。目撃者によると「ぶっ殺すぞ」と叫んだという。県警は殺人事件として捜査を始めた。学校側は会見で「本当に信じられない」と、言葉を失った。

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犠牲になった小山智史さん(39)は、04年に外務省に入省した職員で、同省に約10人しかいないミャンマー語の専門家の1人だったことが、分かった。

外務省のホームページでは、13年9月に掲載された「チャレンジ! 外務省の専門家インタビュー」で、小山さんの活動が紹介されている。それによると、大学入学時にアジアに関心を持ち、一般に知られていない言語を学ぼうと、ミャンマーの言葉を専攻。語学を生かした仕事に就きたいと、外務省に入った。

現地の大学で2年研修し、ヤンゴンにある日本大使館でも3年間勤務。要人らの通訳を担当した。13年にアウン・サン・スー・チー氏が来日した際は、担当官としてプライベートの買い物にも付き添い、同年の国連総会では、ミャンマーの外相と会談した岸田文雄外相(当時)の通訳も務めた。現在の所属は、広報文化外交戦略課だった。

小山さんはインタビューで、「ミャンマー語は日本人にはとても学びやすい言語だと思います。文法が日本語とまったく同じ」と答え、簡単な会話も紹介。現地のカラオケでミャンマーのロックを歌い、語学力を磨いたことも明かしていた。2国間の交流を裏方として支えてきた専門家が、突然の悲劇に巻き込まれた。