「老後2000万円」問題が、泥沼化の様相をみせてきた。麻生太郎金融担当相が所管する金融庁が、4月12日に開かれた金融審議会の市場ワーキング・グループに、老後の30年間で「1500万円~3000万円が必要になる」とした、独自の試算を提示していたことが18日、分かった。

2000万円が必要として問題になっている金融審議会の報告書とは、別の試算。公的年金だけでは老後に不安が生じかねないことを、金融庁も「だめ押し」(野党関係者)した形で、報告書の受け取りを拒否して批判をかわそうとした麻生氏には、大きな誤算だ。

麻生氏は18日の参院財政金融委員会で、3000万円について「途中経過(の数字)で報告書にも記載されていない。退職後に3000万円が不足するという誤解や不安を招くなら、不適切だ」と釈明。2000万円の報告書については「参考になるところもある」として、表現などが整理されれば受け取る可能性に含みを残した。

安倍晋三首相は参院厚労委員会で、報告書について「平均値での乱暴な議論は不適切。すべての人にあてはめるのは間違っている」と述べ「公的年金が将来の生活設計の柱に変わりはない」と訴えた。19日、1年ぶりに行われる党首討論も年金問題が主要テーマだ。07年参院選を「消えた年金問題」が直撃して惨敗し、年金問題が「鬼門」となっている安倍政権。参院選前に、説明責任が求められている。【中山知子】