各陣営が激しい舌戦を展開してきた参院選も終盤戦。それぞれの訴えの中で有権者は何を思い、何を重視して選択するのか。今日から「私の視点」と題し、各界の著名人に聞いていく。第1回は昨年9月まで日本テレビ系「NEWS ZERO」のメインキャスターを12年務めた、関西学院大教授の村尾信尚氏(63)です。

   ◇   ◇   ◇

今回の参院選は、人口が減り、深刻な人手不足に加えて消費者も生産者も減り、経済活動全体が縮小していく中、非常に大事な選挙です。将来への不安が表れている中、「老後2000万円問題」が出てきました。金融庁の報告書は「国民に向けた老後の避難勧告」ですが、政府は無視して握りつぶし、野党はけしからんと批判して政局にしちゃう。

皆さんは年金、医療、介護、子育てなどの公共サービスを政府から受けていますが、財源は税金と社会保険料で60~70%くらいしか払われておらず、残りは借金です。日本は国内総生産(GDP)が540兆円の一方、国と地方の借金は1000兆円。国民の数で割ると1人700万円…こんなに借金のある国は日本以外はない。大蔵省が長かったから分かりますが、この国は持続可能ではありません。

しかも、投票権もない子どもや次世代に、平成の30年間、借金を付け回してきた。こんな、ひどいことはない。僕は財政再建の立場から、今の世代に負担を求めないとダメなので消費税は増税すべきだと言ってきました。一方で消費税を撤廃し、大企業やお金持ちから税金を多く取るべきという主張もある。自分たちで、どう財源を確保して回していくのか…次の選挙より、次の世代をどうするかという議論がなされなきゃいけないのに、誰もやっていないのが一番の問題です。

日本は民主主義であり有権者主権…つまり、投票用紙で政党を選び、政治を変えていくことができる。投票用紙は所得、社会的地位、性別にかかわらず、誰もが1票、割り当てられている。有権者の皆さんは国を動かす貴重な1票、ものすごい大切な武器を持っています。使わない手はない。投票によって何がどう変わるかということを考え、有効に使って欲しいと思います。

◆村尾信尚(むらお・のぶたか)1955年(昭30)10月1日、岐阜県高山市生まれ。78年に一橋大経済学部を卒業し大蔵省(現財務相)入省。主計局主計官、理財局国債課長などを歴任。82年に外務省に出向しニューヨーク日本総領事館副領事。95年に三重県に総務部長として出向。02年に環境省に転出後、退官。03年に三重県知事選出馬も落選し、関西学院大教授に就任。06年10月から18年9月まで「NEWS ZERO」メインキャスター。