映画「新聞記者」は、若き女性新聞記者と内閣情報調査室の官僚が対峙(たいじ)し、葛藤する姿を描きました。6月28日を初日にしたのは、参院選が行われる“政治の季節”にぶつけようと狙ったから。企画したのは2年以上前ですが、当初から現政権の体質がすごく強行的に強くなっていた。右傾化ではなくて一元化し、それが独裁化していくと予見しました。

それにしても、参院選前に「老後2000万円問題」のようなことが起こるとまでは予見できなかった。麻生財務相が金融庁の報告書を受け取らない…普通だったら政権がひっくり返るレベル。そうしたことが、連続的に起きていながら森友、加計問題だって、官邸はほぼ無視。でも選挙には勝ってしまう…エラい時代ですよ。

なぜか? メディアが取り上げないからです。メディアと政権との関係も一元的になっている。麻生氏は昨年6月に「新聞を読まない人は全部自民党(の支持)だ」などと発言。安倍首相もSNSでタレントと食事したところをアップしたり、新聞を読まない層を攻める…言ってしまえば、きちんと裏を取る行動をしている新聞がばかにされている。読者が新聞を読まなくなり、部数が落ちることと、政治への無関心はリンクしていると思います。

「新聞記者」は7月18日までの3週間で、興行収入3億7000万円とヒットしました。若い世代も足を運んでくれていると聞き、うれしく思います。この映画を見た上で新聞を読み、SNSなどで情報を集めて投票して欲しい。無党派層には、自分が政治に参加できるチャンスだと言いたい。政治は自分の生活に直結しています。根本的に社会の仕組みを変えていかないと。その意味で参院選は非常に大きな意味を持っています。

◆河村光庸(かわむら・みつのぶ)1949年(昭24)8月12日、福井県生まれ。慶大経済学部中退後、94年に青山出版社、98年にアーティストハウスを設立。ヒット書籍を手掛ける一方、映画出資にも参画し08年にスターサンズ設立。エグゼクティブプロデューサーを務めた11年「かぞくのくに」は数々の国内の映画賞を受賞、藤本賞特別賞にも輝いた。企画・製作作品に16年「あゝ、荒野」など。