東京都が朝の通勤手段として船を活用する社会実験が24日から行われる。通勤時間の混雑緩和や来年の東京五輪期間中の活用も見据えたもので、23日に取材会が行われ、記者が一足早く「船旅通勤」を体験した。

航路は東京・日本橋の船着場から晴海付近の朝潮運河船着場を結ぶ。乗り込んだ日本橋の船着場は、メトロ三越前駅の出入り口から約1分。便利な場所にある。

所要時間は約30分。船着き場を出ると、しばらく首都高速の下を走る。都会ならではの光景だ。時々、橋をくぐるが、船の上部が橋に触れそうなほど間隔がとても狭い。ちょっぴりスリリングな気分を味わえる。

その後、高層マンション群が見えたりと、めまぐるしく変わる景色に飽きることはなかった。運航中、船の前後に設けられた小さなデッキのいすにも座ることができる。あいにくの雨だったが、天気が良ければ風を受けながら、景色を堪能できる。

潮位の変化などで、航路が一部変更されることもある。その航路も通ったが、レインボーブリッジや建設中の五輪選手村も見えた。

船は6種類で、定員はいずれも40人。船内の2人掛けシートは思ったよりもゆったりとしていた。シートは赤、黄、緑とカラフル。窓は比較的大きく、船内からの眺めも良い。

スピードは時速約15~20キロ。船はゆっくり進み、揺れもあまり感じなかった。都担当者によると、すれ違う船から波を受けて、揺れる場合もあるが、朝の時間帯はすれ違う船が比較的少ないという。

個人的にヒットしたのは、座席付近に電源コンセントとドリンクホルダーが設置されていたこと。スマートフォンを充電する一方、飲み物を飲みながら街並みを眺める。利便性がありながらも、優雅な気分を両立できるのは歓迎だ。

乗った船は屋根付きだったが、屋根なしの船もある。デメリットを感じたのは、万が一、屋根がない船に乗った場合、傘は隣の乗客に当たるので、船に用意されたポンチョ使用となること。スーツやカバンをぬらしたくない。通勤では気になるところだ。大雨など天候状況では、運航休止もあり得る。どうしても天候に左右されてしまう。

24日から8月2日までの社会実験では、いずれの船着き場からも午前7時半から運航開始。同9時までの間、15分間隔で計14便を運航する。無料だが事前予約制で、各便先着順。立席はない。都担当者は、船旅通勤のメリットを「ゆったり座って、オフィスまで行けること」と挙げた。さらに「首都高や高層マンションが並ぶ佃のリバーシティーなど、東京ならではの景観を味わえる。日本橋の船着き場からはどこに行くにも交通アクセスがいい。晴海付近はマンション、日本橋はオフィスが多いので、需要はある」と話した。今後の課題に料金設定を挙げた。

インターネットや電話で予約を受け付けているが、約4000人受け付けのところ、約1500人の予約があったという。空席がある場合のみ、予約なしでも乗船できるが、すでに満席の便もある。

所要時間は約30分だが、同区間を電車移動した場合は約20分。バスなどの利用だと約30分かかるという。電車移動の方が多少早いものの、乗り換えがあり、遅れることも多い。船でノン渋滞に巻き込まれず、ノンストップで目的地付近に行けるのは悪くない。料金と天候次第では、東京観光気分の船通勤は“アリ”と感じた。