来月20日開幕するラグビーワールドカップ(W杯)2019の直前、もう1つのW杯が日本で初開催される。「国際防衛ラグビー競技会」。9カ国の軍隊と自衛隊が参加し、国の名誉を懸けて戦う。日本代表(ブレイブ・ブロッサムズ)と国是の専守防衛から「ディフェンス・ブロッサムズ」と名付けられた自衛隊チームの候補には東日本大震災で出動した隊員も19人いる。

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チームを率いるのは87、91、95年と3度、W杯を経験した松尾勝博ヘッドコーチ(HC=55)。昨年から4次の合宿で、候補を43人に絞り込んだ。「外国人や日本のトップリーガーに比べると、体格では下回ります。でも低いタックルでミスを誘い、ディフェンスから得点につなげるラグビーをしたい。低さとスピード。『ディフェンス・ブロッサムズ』の名に恥じないラグビーをしたいと思います」と話す。

代表34人は今月20日に発表される。ここまで残っている43人には東日本大震災で福島第1原発から2キロ圏内で行方不明者捜索にあたった習志野駐屯地空挺(くうてい)チームの11人。大きな津波被害を受けた宮城県石巻市、名取市、岩沼市で活動した船岡駐屯地施設科の8人が含まれる。スクラムの中心となる第1列の体重は100キロ弱、ラインアウトの要ロックの身長は180センチ台前半とサイズは小さいが、被災地で体を張ってきた隊員たちだ。入隊後にラグビーを始めた選手も8人いる。

初戦はフランス-パプアニューギニアの勝者が相手になる。順当なら前回3位のフランスだ。日本はこれまでフランスとは、17年11月、日本代表が23-23で引き分けたのが最高成績で、U20、高校など世代別代表を含めて勝ったことがない。「自衛隊が先陣を切りたいですね。イメージとしては4T、3G、2PGで32点。向こうに4T取られることは覚悟しなければいけないけれど、しっかり体を張れるメンバーを選出してみんなで守り切りたい。自衛隊らしい規律で反則をせず、PG差で勝ちたい」(松尾HC)。

大会を前に「ディフェンス・ブロッサムズ」はジャージーを一新した。エンブレムは防衛省マークから、省の階級章で最高位を示す「5つ桜」に変更し、防衛省代表であることを示した。胸には歌舞伎の隈(くま)取り。「正義と力強さ」を表したという。キックオフは9月15日午前11時半。W杯開幕戦、日本-ロシアの5日前。文字通り前哨戦になる。【中嶋文明】

○…競技会には韓国が初参加する。海自機へのレーダー照射問題が起こった昨年12月以前に出場を打診し、韓国軍体育部隊が参加すると連絡があった。日韓関係は冷え込む一方だが、大会準備室で企画・運営にあたる若松忠司3佐(37)は「不参加という連絡は来ておらず、パンフレットの作成などやりとりは続けています。心配はしていますが、予定通り準備をしています」と話す。<1>韓国がフィジーに敗れ、親善試合でオーストラリア-トンガの敗者に勝つ<2>日本がフランスに敗れる、と日韓戦が実現する。

◆国際防衛ラグビー競技会 各国軍で最強のラグビーチームを決める大会で、2011年からW杯開催国で開かれている。自衛隊は15年英国大会から参加。15年は予選リーグ方式で、ニュージーランド、英国海軍、フィジーと同組となった自衛隊はニュージーランドに5●55、英国海軍に11●64、フィジーに3●78と大敗。決勝トーナメントに進めず、敗退国親善試合でジョージアに28○26で勝利した。優勝は第1回が英国陸軍、第2回がフィジー。