日本全国でうだるような暑さが続く中、バテ気味なのは人間だけでない。各地の動物園でも、それぞれ暑さ対策を講じている。

愛らしい立ち姿で有名なレッサーパンダの風太(16)が暮らす千葉市動物公園では、サルやゴリラにエサ入りの氷をあげるなど、一部動物に対し、暑さ対策用“もぐもぐタイム”を設定。猛暑を乗り切ろうとする動物たちの姿を間近で見ることができる。

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取材した10日の千葉市の最高気温は32・6度。レッサーパンダの風太は、屋外にある冷風機付きの小屋の中で朝からグッタリ寝ていた。担当飼育員によるとレッサーパンダは暑さに弱く、夏は涼しい屋内と屋外を自由に行き来できるようにしている。

風太は高齢で、約1年前から右目が白内障にかかっていた。担当員によると、来園者の前で立つことは約半年ないが、裏では、1週間に数回程度は立っているという。担当員は「夏は食欲が落ちる子もいますが、風太はいつも食事は完食です」と感心している。

モルモット約30頭は、凍らせたペットボトルを置いたアルミ板に集まっていた。ペットボトルに体を押し付けたり、冷えたアルミ板に乗ったりしていた。

アジアゾウのアイ(36、メス)は担当員にえさをもらいながら、ホースで水をかけてもらっていた。ただ、水をかけるだけだと、水遊びだと思ったアイから、鼻にためた水をかけ返されることがあるという。

ボルネオオランウータンのフトシ(31、オス)は来園者に完全に背を向け、金網にもたれて座っていた。最初、機嫌が悪いのかと思ったが、よく見ると、金網の外でミストが出ていた。ミストが頭から背中全体にかかるよう、実は万全の態勢を取っていたようだ。

イケメンのニシゴリラ、モンタ(35、オス)には、担当員が乳酸飲料を凍らせた小さな氷を投げ入れていた。モンタは“ノールック”で氷をキャッチ。さっと口に運ぶ姿に、イケメンぶりがさらに増して見えた。

約30頭のニホンザルは、投げ入れられたにんじん&フルーツ入り氷や好物のさつまいも入り氷をうまくキャッチ。地面にこすったり、かじっていた。好みではないにんじん入り氷に、渋い顔をするサルもいた。

コツメカワウソはドジョウ入りの氷をもらっていた。氷を地面にたたきつけて割り、ドジョウを上手に取りだして食べる子もいた。

風太はほぼ終日、屋外の小屋でゴロゴロし続けていた。小屋から出たのは、日が傾いた閉園間際の夕方。座り込み、無心に体をかき続ける姿も立ち姿同様、やっぱり愛らしかった。【近藤由美子】

○…初の公募で4月1日に千葉市動物公園の園長に着任した元東芝部長で会社執行役員の鏑木一誠氏(56)は着々と改革を進める。7月からネット通販大手「アマゾン」の「ほしい物リスト」を使った寄付制度を導入。公営動物園初の試みは職員の発案から進めた。鏑木氏は「職員の創意工夫があふれ出るような環境作りをしたい。今後はICT(=情報通信技術)を使った仕掛けも考えています」。さらに「大型類人猿(ゴリラ、チンパンジー、オランウータン)を同一公園で見られるのは、実は東日本ではここだけ」と話した。

○…各地で人気の動物たちも独自の暑さ対策を行っている。名古屋市・東山動植物園によると、「アアアアア~」という声が「オッサンの叫び声みたい」と大人気のケイジ(推定34歳)を含むフクロテナガザルには、最近は毎日、氷をあげているという。イケメンゴリラとして有名なシャバーニ(22)を含むニシゴリラは、涼しい室内と屋外を自由に行き来できる環境で過ごしている。ペンギンは、既設のミスト装置で涼んでいる。5月に脱走がニュースになったカナダヤマアラシには、夏限定でミストを浴びさせているという。