袋小路に陥っている日韓関係は、解決の糸口がなかなか見えてこない。政治的な両国政府の対立は、市民レベルの文化交流にも暗い影を落とす。韓流ブームの聖地、東京・新大久保には、韓国芸能や食文化に関心を持つ、多くの若者が集まる。韓国の一部では日本製品の不買運動が起こっているが、両国の市民からは早期解決と相互理解を深めようという声が多く聞かれた。
混迷を深める日韓のいがみ合い。12日には韓国政府が、安全保障上の輸出管理で優遇措置を取る国のグループから日本を9月ごろに除外すると発表した。日本が安全保障上の輸出管理で優遇措置を取る「ホワイト国(優遇対象国)」から韓国を除外することに対する事実上の対抗措置だ。両国の関係悪化に拍車が掛かる中、新大久保を訪れる市民からも不安の声が聞かれた。
韓国人が経営するアクセサリー店に勤務する日本人女性(20)は「(韓国の)グルメとアイドルが好き」と語り、最近ニュースで目にする日韓の関係悪化について心を痛める。「すごく心苦しい。国同士で勝手に悪化させてほしくない。日本の若者は韓国が好きな人も多い。韓国にも、日本人在籍のグループが多く音楽などを通じて韓国人も日本の良さを知る人がいると思う。だからもっと近づいていけたらいいのにな」と語る。
勤務先でも「すごくいい人たちがたくさんいて仲良くしてもらっている」と韓国人との交流の深さを口にする。韓国に留学している友人からは「日本人に対して何も変わっていない。日本が騒いでいるだけで、韓国の若者は気にしていない」と報道で見聞きする内容とのギャップを明かした。
埼玉県に住む22歳の女性は、今回の騒動を受け、10月に予定していた韓国旅行を「危ない。怖い」という理由でキャンセルした。それでも「韓国のアイドルが好き。複雑な思いですが、これからも応援する気持ちは変わらない」と話した。
日本で働く韓国の男性も複雑な心境を語った。飲食店で働くチェ・ヨンスさん(26)は「国民同士(のわだかまり)はないと思いますが、国と国の関係で国民の関係まで悪くなるとちょっと心配。仲直りしてほしい。結局被害を受けるのは国民。だから仲直りして昔みたいにいい感じにしたいです」と和解を望んだ。
関係悪化による売り上げの影響については「上がったり下がったりはしていない。全然、影響はありません。日本の人々は韓国のアイドル、食べ物とか好きだから来るんじゃないですか。むしろ韓国の友人から『大丈夫?』と連絡来ますね」と語った。【佐藤勝亮、佐藤成】
◆日韓問題の経緯 日本政府が7月4日に、元徴用工訴訟で日本企業に賠償を命じた韓国最高裁判決をめぐり、事実上の対抗措置として半導体材料3品目の韓国向け輸出管理を厳格化。1日に、河野太郎外相と韓国の康京和外相が会談を行い、撤回要求する康氏に対し河野氏は安全保障目的の正当な措置だと説明。翌2日、日本政府が安全保障上の輸出管理で優遇措置を取る「ホワイト国」から韓国を除外する政令改正を閣議決定。文在寅大統領は「加害者である日本が盗っ人たけだけしい」などと批判。12日に対抗措置として、安全保障上の輸出管理で優遇措置を取る国のグループから日本を9月ごろに除外すると発表。