東京パラリンピックで「欽ちゃんシート」の設置計画を進めるタレント萩本欽一(78)が、日刊スポーツのインタビューに応じた。観客席が満員だった12年ロンドンパラ大会を目指して、外国選手同士の競技など日本の観客が少ないと予想される試合を中心に、観戦する構えだ。世界に向けた、欽ちゃん流のおもてなしだと明かし「世界の人に日本、東京のおもてなしは最高だったなあと、笑顔で帰っていただきたい」と、目的を話した。大会1年前の25日、都内では記念セレモニーも開かれた。

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「スポーツってふと気づくと、勝つか負けるかしかなくなるけれど、もう1つ大事な一面があると思う」。萩本は、東京パラリンピックで計画する「欽ちゃんシート」を、日本にやって来る各国選手へのおもてなしの場にしたいと話した。

きっかけは、12年ロンドン大会。「会場が、観客でいっぱいだったの。イギリス人って最高だなと思った」という。かねて「東京の大会で席ががらんとしていたら、日本人として恥。欽ちゃんファミリーを集めて、どちらを応援するというのではなく、ようこそ世界の皆さんという感じでにぎやかにしたいなと、考えていた」そうだ。

そんな中、東京都からパラリンピックの成功とバリアフリー推進に向けた懇談会のメンバー就任を打診された。6月の初回会合で、計画を披露。小池百合子知事も「面白い。考えましょう」と賛同した。最初は「全部買う」計画も立てたが、人気競技はどんどん売れると聞き、方針を変更。22日に、第1次抽選申し込みが始まったが、チケット販売状況を見ながら、どの競技を対象にするか決める。「気軽に行ける金額のものもあるし、自由席が多いので、移動がしやすい。シートは自然発生的にできるんじゃないかな。海外の選手同士が戦う試合の場合は、両方を走り回ってあげたい」。チケット購入用のポケットマネーも準備した。

「実績」はある。愛媛で開かれた08年の女子野球W杯。実行委員長として参加したが、決勝戦前、日本と戦うカナダ側の観客が少ないと気づいた。「僕、怒ったの。カナダの人に、愛媛っていい所と思ってもらうのが大事じゃないのって」。県が動き、カナダの応援席も埋まった。選手は「愛媛の人にお礼を言い、笑顔で帰ってくれた」そうだ。

「(東京大会の)おもてなしって、何をするのって思っていた。会場をいっぱいに埋めるのが、真のおもてなしじゃないかな。(滝川)クリステルさんの『お・も・て・な・し』の言葉が、生きた形になる大会に、ぜひしたいね」。

以前、横浜スタジアムでも「欽ちゃんシート」を設け、多くの観客を集めた。「私ひとりでは、客席は埋まらない。欽ちゃんといっしょにおもてなしをしたい人に、集まってほしい」。江戸っ子の「粋」も、伝えたいという。「日本人が外国の大会に行った時、『日本で応援してもらったので来たよ』と言ってもらえたら大成功。世界で日本を応援してくれる、『パラ友』を増やしたい」とも考える。

東京パラ大会の成功は、満員の会場が1つの鍵を握る。奮闘するアスリートを、萩本は客席から全力応援する。【中山知子】