最近、プラスチックごみについてのニュースが増えていますよね。6月のG20大阪サミットに続き、26日に終了したG7ビアリッツ・サミットでも海洋プラごみが議論になるなど、世界的に深刻な問題になっているようですが、詳しいことはあまり分かりません。そこでプラごみ問題の第一人者、東京農工大の高田秀重教授に「今さら聞けない基礎知識」を聞いてみました。

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Q プラスチックのごみが問題といわれても、いまひとつピンとこないのですが

高田先生 地球規模で海の汚染が問題になっていますが、その中でも石油ベースのプラスチックが一番問題だという認識で一致しています。世界では、年間4億トンのプラスチックが石油から生産されています。そのうち年間800万トン(※何も積んでないジャンボ機約4万機超に相当)が海に流れ込んでいて、5兆個以上が漂っているとみられています。処理や管理が今のままの場合は、流入量が20年後に10倍になり、2050年には海の中の魚とプラスチックの重さが一緒になってしまうだろうとみられているのです。海底を含めれば、プラスチックのほうが多いことになります。

Q 日本では分別しているし、リサイクルも進んでいると思っていました

高田先生 日本のプラスチックごみは年間約900万トンです。回収されたプラごみのうち6~7割が焼却され、一部が発電や温水プールなどに利用されます。この熱回収は「サーマルリサイクル」と言われる場合もありますが、燃やせば循環しないので、国際的にはリサイクルにはカウントされません。別のプラスチック製品にする「マテリアルリサイクル」は約20%にすぎません。さらにこのうちの半分以上が東南アジア、中国などに輸出されてきており、国内で純粋にリサイクルしているのは10%以下になります。ほかに1度石油に近い形に戻す「ケミカルリサイクル」が数%です。

使い捨てプラスチックの1人当たりの使用量は、世界1位が米国、2位が日本、3位が中国です。ペットボトルは、2015年に年間227億本生産されました。回収率が88・8%とされ、約25億本が未回収で、その一部が海へ流入しています。

日本が大量に輸出しているアジア諸国では、廃棄物管理のキャパシティーもあり、海などにあふれ、黒潮などの海流に乗って日本周辺までやってくるものも少なくありません。

Q 昨夏に大手コーヒーチェーンのスターバックスが、プラスチック製の使い捨てストローの使用を2020年までに世界中の店舗で全廃すると発表したり、昨年と今年のG7や、G20大阪サミットでも海洋プラごみ汚染問題が議論されるなど、昨年から急に深刻なニュースが増えています

高田先生 1つのきっかけが“チャイナ・ショック”です。欧米や日本から大量のプラごみを輸入していた中国が、昨年1月から受け入れをストップしました。そこで欧州や国際企業からは使い捨てプラスチックを削減しようと、さまざまな案が出てきました。日本は、輸出先を東南アジアに移しました。アジアや日本から流出したものは、太平洋や北米も汚染します。みんなが当事者意識を持たなければならない問題なのです。【聞き手・構成=久保勇人】

◆高田秀重(たかだ・ひでしげ) 東京都出身。東京都立大大学院理学研究科修士課程修了。現在、東京農工大農学研究院教授。マイクロプラスチック問題の世界的権威で、国連の海洋汚染専門家会議のワーキンググループ・メンバーとして世界のマイクロプラスチックの評価を担当している。2015年に海洋立国推進功労者として内閣総理大臣賞を受賞。東京農工大が今夏、全国の大学に先駆けて打ち出した「プラスチック削減5Rキャンパス」活動の中心メンバーでもある。