昨年3月、東京都目黒区で船戸結愛(ゆあ)ちゃん(当時5)が死亡した事件で、保護責任者遺棄致死罪に問われた母親優里被告(27)に東京地裁は17日、懲役8年(求刑懲役11年)の判決を言い渡した。弁護側は元夫・雄大被告(34)からの心理的DVを訴え、懲役5年が相当と主張したが、「心理的支配が強固だったとはいえない」と判断した。

◆元東京地検特捜部副部長の若狭勝弁護士(62)のコメント 懲役8年の判決からは、母は子を守らなければいけない社会であるべきという大きな指針を感じる。裁判長は、優里被告は元夫のDV下にあったが強固な支配とは言えないとしている。保護責任者遺棄致死罪となったのも、優里被告は犯罪の主体的立場にあり、結愛ちゃんの死を招かないため母としてなすべきことは出来たという判断だろう。

6月には千葉県野田市の児童虐待死事件で、DVを受けた妻が懲役2年6月、保護観察付き執行猶予5年の判決を受けた。似た案件ながら量刑に開きがあり、疑問を感じる人はいるかも知れない。ただ、千葉事件の裁判長は妻が夫の支配下にあったとして傷害ほう助罪を認め、妻を犯罪の主体として見ていない。検察は目黒の事件に対し、抜きんでた悪質性を感じたのだろう。

10月に初公判が開かれる雄大被告には、懲役20年台の求刑があり得るとみる。