19年のノーベル化学賞を受賞した、旭化成名誉フェローで名城大教授の吉野彰氏(71)が、受賞から一夜明けた10日、都内の日本化学会で会見を開いた。その中で、科学への興味を持つきっかけになった本として挙げた、英国の科学者ファラデーの著書「ロウソクの科学」の、現代版にあたるような書籍を書かないかと、出版社からオファーを受けたことを明かした。

吉野氏は久美子夫人(71)を伴って先に都内で開いた会見の中で「ロウソクの科学」について説明。「まだサイエンスがほとんど進歩していない時に、ファラデーが説明した教科書。ウソは全く書いていない。事実に基づいてやさしく説明している。改訂何版かになっている古典」とした上で「まだまだ第2、第3が出来ると思うんですけどね」と答えた。

場所を変えての会見で、記者から「ご自分で第2、第3の『ロウソクの科学』をご自分で書く気はないのか?」と聞かれると「ある出版社の方からオファーがありました。ただ、時間がなくて…」と笑顔で明かした。その上で「現代版と言うのか、今の子どもたちに、そういうのを教えて上げると、私が受けたような取っ掛かり、印象を持ってくれるのでは?」と、自らの執筆に前向きな姿勢を見せた。

「ロウソクの科学」は、吉野氏の受賞を受けて、9日夜から全国の書店から問い合わせが殺到し、岩波書店(東京都千代田区)とKADOKAWA(同)は10日、増刷を決めた。岩波文庫版は累計70万部となり、KADOKAWAは角川文庫を2万部、児童向けの角川つばさ文庫を1万部それぞれ増刷する。

インターネット通販大手アマゾンの売れ筋ランキングで10日正午、1、2、3位を角川文庫と岩波文庫、角川つばさ文庫の「ロウソクの科学」が占めた。

吉野氏は、そうした反響を聞くと「ウワァー」と驚きの声を挙げ、喜んだ。【村上幸将】