東京都目黒区で昨年3月、船戸結愛(ゆあ)ちゃん(当時5)が死亡した事件で、保護責任者遺棄致死や傷害などの罪に問われた父親雄大被告(34)に対し、東京地裁(守下実裁判長)の裁判員裁判は15日、懲役13年(求刑懲役18年)の判決を言い渡した。保護責任者遺棄致死事件としては、16年1月の埼玉県狭山市の3歳女児虐待死事件の母親への判決(懲役13年)と並び最も重い。

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初公判から論告求刑までの過去5回の公判と同じ、ぶかぶかの黒のスーツ、青のネクタイ姿の雄大被告は「懲役13年に処す」と言い渡されても、うつむいて両拳を握ったまま、表情を変えなかった。

保護責任者遺棄致死事件では最も重い懲役13年。弁護側によると、子どもが被害者になった保護責任者遺棄致死罪の裁判は35件あるが、13年は埼玉県狭山市の3歳児虐待死事件で、さいたま地裁が母親に言い渡した1例だけだという。

弁護側は「死亡するまで放置する最も悪質な部類とは異なり、自ら119番通報している。結愛ちゃんの生命の危険を認識したのは死亡前日の3月1日」として、懲役9年が相当と主張していた。これに対し、守下裁判長は2月27日の段階で「(体重)12キロ台はやばい」と発言していたこと、全裸にし体の状態を見ていたことから「痩せていたことに気付かなかったというのは不合理。信用できない」と退け、「要保護状態にあると認識したのは遅くとも2月27日」と判断した。

その上で1月まで16・66キロあった体重を、1カ月で12・2キロまで25%も減少させた食事制限を「苛烈」とし、シャワーで冷水をかけて顔面を手加減せずに殴るなどの暴行を「常習的、執拗(しつよう)かつ強度」と指摘した。虐待の発覚を恐れ、病院に連れていかなかったことは「身勝手極まりない保身」として「治療を受けさせてもらえないまま死亡した被害児童の身体的苦痛、悲しみ、絶望感は察するにあまりある」と述べた。

守下裁判長は、心理的DV下にあった母親優里被告(27)の公判も担当した。9月17日、懲役8年(求刑懲役11年)を言い渡すと、「大変重い刑です。結愛ちゃんは戻ってきませんが、こうなってしまったことを裁判が終わってからもしっかり考えて下さい。人生をやり直して下さい」と説諭した。しかし、今回、控訴手続きについて説明すると「言い渡しを終わります」。「同種事案で最も重い部類に位置付けられる」罪を犯した雄大被告を諭す言葉はなかった。【中嶋文明】