大阪・吹田市の千里山交番で、勤務中の巡査が包丁で胸などを刺され、拳銃を奪われた事件から間もなく5カ月。当時、重傷を負って入院していた古瀬鈴之佑巡査(27)が5日、退院した。一時意識不明の重体に陥った古瀬巡査は高校、大学とラグビーで活躍したラガーマンで母校の恩師や後輩、ラグビーワールドカップ(W杯)の日本代表たちからも相次いだ「頑張れ!」の熱い応援メッセージに支えられた。

熱い応援のスクラムとラグビーで鍛えた強靱(きょうじん)な心身が古瀬巡査を回復へと導いた。6月、包丁で胸や太もも、腕など7カ所以上を刺され、胸の傷は肺を貫通して心臓まで達した。一時は意識不明に陥った。現在は生活に支障がないレベルまで回復し、リハビリの一環で軽いジョギングまで可能になった。

名門・佐賀工で全国高校ラグビー大会(花園)にWTBで出場し、東海大でも日本代表リーチ・マイケル主将(31)の後輩としてBKでプレーしたラガーマンは不屈の闘志で再び立ち上がる。母校佐賀工高の後輩たちは意識不明の先輩の一刻も早い回復を祈り、武骨で不慣れな手つきで小さな千羽鶴を折り、部訓である「不撓不屈(ふとうふくつ)」と記したリボンを付けて病室に届けた。

事件から約1カ月後の7月17日、佐賀工を率い、元日本代表FBの五郎丸歩(33)らを育て上げた小城博総監督(69)は意識が回復した古瀬巡査を初めて見舞った。古瀬巡査は恩師を前に「花園に応援に行けるようにリハビリを頑張ります」と気丈に話した。10月26日、リハビリを続ける先輩の熱い思いに後輩たちが応えた。県予選決勝で鳥栖工に209-0と大勝し、38大会連続48回目の全国大会「花園切符」をつかんだ。

ラグビーW杯で列島を沸かせたラグビー日本代表もツイッターで「頑張れ!」と呼びかけた。五郎丸、リーチ、高校時代に同じ福岡県選抜だったWTB福岡堅樹(27)らが激励の動画メッセージを掲載し、代表ジャージーも贈った。古瀬巡査は熱い応援のスクラムに感謝し、「頂いた応援メッセージが励みになり、これからも頑張りたい。よろしくお伝えください」と話していた。今後は週に数回程度、通院しながらリハビリを続け、復帰を目指す。【大上悟】

◆鑑定留置 6月16日、大阪・吹田市の千里山交番で勤務していた古瀬巡査が包丁で胸などを刺され、拳銃を奪われた。強盗殺人未遂の疑いで逮捕された飯森裕次郎容疑者(33)は事件当時の刑事責任能力の有無などを調べるため、12月2日まで鑑定留置されている。