2020年度開始の大学入学共通テストを巡り、政府が、国語と数学の一部に導入予定だった記述式問題を見送る検討に入ったことが5日、分かった。記述式は約50万人の答案を短期間で公平に採点するのは不可能などの批判が、教育現場や野党から噴出している。共通テストでは、萩生田光一文科相の「身の丈発言」もあって英語の民間検定試験の導入も見送ったばかり。大学入試改革の2つの目玉がなくなることになり、ずさんな制度設計があらためて露呈している。

英語とともに、教育現場、専門家、野党などから公平性、公正性について致命的な制度の欠陥が指摘されてきた国語と数学の記述式問題。その風向きがようやく変わった。公明党の斉藤鉄夫幹事長がこの日午後、萩生田文科相と面会し、見直し・延期を検討するよう求めた。斉藤氏によると、萩生田氏は「重く受け止める。受験生のことを考えると1年前までに方向性が決まっていないのは不安だろうから、年内がリミットだ」と答え、近く最終判断する考えを示したという。

萩生田氏も文科省も大学入試センターも、かたくなに実行にこだわってきた。萩生田氏は斉藤氏との面会後に出したコメントでも「導入の延期を決定したり、検討したりしていることはない」としたが、与党からも公に声が上がり、瀬戸際に追い込まれた形だ。

文科省のある幹部は「採点ミスをゼロにするのは、ほとんど不可能。野党の指摘は当たっている」と明かす。官邸側も後ろ向きで、導入して混乱を招けば、政権のリスクになりかねない。政権幹部は文科省幹部に「受験生が納得できる仕組みが作れないなら、見送りも検討するように」と指示。官邸筋は「冬休みに入る前に受験生を安心させてやるべきだ」と指摘する。

共通テストは21年1月に初回が行われ、記述式は国語と数学1、数学1・Aで各3問ずつ導入予定。国語は最大80~120字程度を記述して5段階で評価し、数学は主に数式で答えて各5点。採点はベネッセコーポレーションのグループ会社の学力評価研究機構が約61億円で受注。学生アルバイトを含む8000~1万人が20日間以内に約50万人分の答案を採点する計画。

しかしマークシート式と違って多様な解答が予想され、すべての採点者が同じ基準で採点することは困難だ。受験生の自己採点も難しく、自分の実力に応じた出願先を決められないとの指摘もある。大学入試には、受験生の準備のため「2年前ルール」がある。大きな変更があれば2年前までに公表しなければならない。本番まで約1年でこの混乱。ルールを自ら破っている文科相や官僚が、受験生に対してどんな決断を出すのか、注目される。