安倍晋三首相は22日、衆院本会議で行われた代表質問で答弁に立った。「桜を見る会」の私物化疑惑に絡めて、立憲民主党の枝野幸男代表に「潔く総理の座を辞してほしい」と退陣要求を受けたが、従来の主張を繰り返しただけ。大臣2人の更迭、自民党議員の逮捕に発展したIR汚職などスキャンダルの説明もゼロ回答でかわした。「政治を行う際、大切なのは、謙虚、丁寧であること」。自民党の二階俊博幹事長の“提言”もむなしく響いた。

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トップバッターの枝野氏は、冒頭から「桜問題」を取り上げた。都内の一流ホテルで開かれた前夜祭の不可解な格安会費、政治資金収支報告書への記載もないこと、マルチ商法批判があるジャパンライフの元会長は「首相枠」の招待か、招待者名簿のずさんな扱い方…。解明されていない課題を1つ1つ取り上げ「やましくないなら開示すればいい。都合が悪いから出せないと言われても仕方ない」と首相の対応を批判。法令違反は明確とも指摘した。

菅原一秀、河井克行両氏の大臣辞任に関する責任をただし、IR汚職で自民党の秋元司容疑者が逮捕されたことにも言及。「安倍政権の成長戦略は、汚れたカジノに頼らないといけないのか」と、IR推進方針に異議を唱えた上で「あなたが疑惑まみれで首相の地位にとどまるなら、日本社会のモラル崩壊が続く。潔く、総理の座を辞してほしい」と、疑惑まみれの首相に直球で退陣を求めた。

これに対する首相の回答は、ゼロ回答の一本道。「桜問題」では、公選法や政治資金規正法の違反はないと反論。政府が廃棄済みとする招待者名簿の再調査も指示しない考えを示した。 辞任した2大臣の任命責任は「痛感している」と認めたが「行政を前に進めることに全力を尽くし、責任を果たす」と、責任の中身をすり替えた。枝野氏に加え、国民民主党の玉木雄一郎代表にも「疑惑まみれ」と指摘されたIR汚職については「現職の国会議員の逮捕、起訴は誠に遺憾」と述べたが、IR事業の凍結要求には応じなかった。

この日はヤジにイラつかなかったものの、中身のない答弁に終始した首相。そんな首相に、唯一、身内で質問した二階氏が、含蓄ある表現でくぎを刺した。「ホームランバッターは、得意なコースのすぐ隣に弱点がある。成功体験に酔うところから失敗は始まる」。

週明けからは、一問一答方式の予算委員会が始まる。追及がより強まる来週以降が、疑惑まみれの首相の正念場だ。【中山知子】