広島中央署(広島市中区)で2017年に特殊詐欺事件の証拠品として押収され、同署で保管されていた現金8572万円が盗まれた事件で広島県警は14日、窃盗の疑いで事件発覚後に死亡した当時36歳の警部補の男を容疑者死亡のまま、書類送検した。17年3月26日ごろ、広島中央署1階の会計課の二重施錠式金庫に保管してあった現金8572万円を盗んだ疑い。

盗まれた現金は17年2月に生前贈与を持ち掛ける詐欺事件で容疑者らを逮捕した際に自宅などから広島中央署が押収したもの。多額のため、同署会計課の鍵とダイヤルで二重にロックする金庫で保管されていた。17年5月8日に盗難発覚、県警は翌9日に窃盗事件として公表した。内部犯行の可能性が高いとみて聴取していたが、現在も盗まれた現金は見つかっていない。

県警は、このままでは被害者への救済はできず、県費(税金)での穴埋めは県民の理解を得られないとして、県警全体で現金を拠出して全額を補ほてんする前代未聞の「集金」を実施した。県警幹部を含む全職員と退職者でつくるOB組織の有志から弁済金を募り、昨年春ごろまでに苦渋の全額8572万円を集め終えている。

容疑者は盗まれた現金の保管を知る立場で、17年春以降に多額の借金を返済したことが明らかになり、捜査線上に浮上したが関与を一貫して否定していた。県警は裏付け捜査の結果、事件に関与した疑いが強いと判断した。 【大上悟】