新型コロナウイルスの集団感染が発生したクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の乗客で、ウイルス検査が陰性だった約500人が19日、下船した。検疫下に置かれた5日から2週間が経過し、乗客には公共の交通機関での帰宅が認められた一方、米国の乗客は帰国後も2週間、隔離状態と対応が分かれた。その中、新たに79人の陽性が判明。下船した埼玉県の60代男性が日刊スポーツの取材に応じ、対策が後手に回った日本の対応を「どうしようもない」と批判した。

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◆「ダイヤモンド・プリンセス」と乗客男性の経緯

1月20日 横浜港を出港

同22日 鹿児島に寄港

同25日 香港に寄港。香港人男性が下船

同27日 ベトナムのチャンメイに寄港

同29日 同国カイランに寄港

同31日 台湾の基隆に寄港

2月1日 那覇に寄港。香港で、香港人男性の陽性が判明

3日 船内アナウンスで乗客に香港人男性の感染が伝えられ、同日夜に横浜・大黒ふ頭沖に到着。午後11時から船内で検疫開始

4日 乗客乗員3711人の検疫終了。ただ検体を取ったのは香港人男性との濃厚接触者と体調不良を自己申告した273人で、それ以外は体温を測るだけの簡素な検疫だった

5日 ウイルス検査で10人の陽性を確認し医療機関に搬送。午前6時半過ぎに船内アナウンスで、全乗客に対し、日本の検疫下に入り最低2週間、船内に滞在し客室に待機するよう通知。食事は客室への配給制になった。船は精製と汚水処理のため外海に出た

6日 10人陽性。食事は昼食からメイン料理を選べるようになった。窓のない部屋の乗客から、マスク着用で、他者とは1メートル以上間隔を置き、部屋に戻ったら20秒の手洗いが条件で、船内での外出が認められた

7日 41人陽性。体温計も配られ、毎日、計測し37・5度以上の乗客は即、連絡と乗客に通知。船内のスクリーンで流していたラジオ体操と太極拳の映像を客室のテレビで流す

8日 3人陽性。船は真水の精製などのため2度目となる外海へ。船内にカウンセリングホットライン「心の相談窓口」を設置。乗客男性は初の散歩で4日ぶりに客室から出る。運動不足の妻はウオーキング

9日 6人陽性。乗客に船に近づくカモメら野生動物に餌を与えないよう船から注意。男性の客室の排気口から、黒いすすのようなものが出始める

10日 65人陽性。運営する米国の会社が、全乗客に旅行にかかった費用を全額返金すると発表。さらに、21年2月28日まで使用可能な、今回のクルーズ代金と同額のフューチャー・クルーズ・クレジットも配布。男性は「“倍返し”までは、予想していなかった」

11日 日本の建国記念の日で、日本人乗客に日の丸の旗と、のどあめが1つずつ配られた

12日 39人陽性。男性は平熱より1度強、高い微熱が出て船内の医療センターに連絡。崎陽軒が乗客乗員の昼食向けに「シウマイ弁当」4000食を寄付

13日 44人陽性。崎陽軒の「シウマイ弁当」が乗客に提供されていなかったことが判明

14日 約200人の80歳以上の乗客のうち、ウイルス検査で陰性が確認され、持病があり、希望した乗客の下船が開始。厚労省がコロナウイルス対応支援窓口のアカウントを開設し、乗客にiPhoneを配布

15日 67人陽性。男性はウイルス検査を受け、検体を提出。船側は船内アナウンスで、厚生労働省からウイルス検査の結果、陰性の乗客は下船できる旨、通達があったと乗客に報告

16日 70人陽性

17日 99人陽性。米国人乗客、乗員が下船し、米政府のチャーター機で離日

18日 88人の陽性が確認され、船内の感染者は542人に上った。男性は妻とともに陰性が判明

19日 陰性だった約500人の乗客が下船