安倍晋三首相は28日、官邸で会見し、新型コロナウイルスの国内の感染拡大を受けて「最悪の事態も想定しながら、拡大防止に全力を尽くす」と、強い危機感を示した。緊急事態宣言発令に向けて、瀬戸際の状況が続いているとの認識も示した。東京都でこの日、1日では過去最多の63人が新たに確認されるなど、感染者が急増する現状を踏まえ「長期戦を覚悟する必要がある」と強調。緊急経済対策の一環として、現金給付を実施する考えも示した。

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首相は、東京や大阪など都市部で感染拡大が進んでいると指摘した上で「(ウイルスの潜伏期間を考えると)いま、爆発的感染拡大が発生していてもすぐに察知できない」と指摘。海外の医療崩壊を「対岸の火事ではない」とした上で「最悪の事態も想定しながら、感染拡大防止に全力を尽くす」と、楽観視はできない日本の環境を強調した。

「拡大か収束か、この1~2週間が瀬戸際」と発言した先月29日の会見から、ほぼ1カ月。「コロナ疲れ、自粛疲れというストレスを感じている人もいると思う。ご不便をおかけしているが、欧米のような強硬措置を回避するためのものだ」と理解を求めた上で、「現状はギリギリ持ちこたえているが、少しでも気を緩めればいつ急に拡大してもおかしくない。この闘いは長期戦を覚悟していただく」と述べ、東京都が要請した外出自粛などへの理解を国民に求めた。

13日に成立した新型コロナ特措法で、私権を制限できる緊急事態宣言発令が可能になったが、現段階では宣言する状況でないとの認識も表明。一方で「瀬戸際の状況」とも述べた。治療薬の研究、開発にも取り組むとし、インフルエンザ薬「アビガン」について、治療薬としての正式承認に向け、治験プロセスを開始する考えを示した。

緊急経済対策として、現金給付を行う考えを初めて表明。「ある程度、ターゲットをおいて思い切った給付を行った方がいい」と対象をしぼる構えだ。与野党から要望がある消費税率引き下げには、否定的な考えを示した。東京オリンピック(五輪)・パラリンピック延期で、大会までの間での衆院解散の臆測も出ているが「そういうことは一切頭から外し、感染症との闘いに集中したい」と強調した。

この日の会見は、1時間後に新型コロナウイルス政府対策本部を控える中始まり、約50分間続いた。先月29日の会見で「まだ質問があります」と訴えながら指名されなかったジャーナリスト江川紹子さんも参加、この日は指名を受けた。