新型コロナウイルスの終息を願い、八坂神社(京都市東山区)では、疫病退散を祈念する「茅(ち)の輪」が設けられている。臨時での設置は、コレラが流行した1877年(明10)9月以来、143年ぶり。同神社の権禰宜(ごんねぎ)東條貴史さん(33)が15日、取材に応じ「皆さまの心のよりどころとなれば。1日も早い終息を願っています」と思いを込めた。

直径約2メートルの茅の輪は例年、疫病退散の祭礼「祇園祭」最終日の「夏越祭」(7月31日)と、「大祓式」(6月30日)で設けられる。今回、コロナウイルスの感染拡大は収まることがなく、終息を願って先月9日に、本殿近くと、境内にある疫神社前の2カ所に、季節外れながら登場した。もともと、祇園祭は869年に、災厄の除去を祈って始まったとされる。祭の締めくくりとして、茅の輪くぐりが行われてきた。

現状、同神社では、感染拡大を防ごうと、本殿昇殿参拝は停止。ちょうず舎も使用をやめ、ひしゃくも姿を消した。1年前の花見シーズンは新元号「令和」決定などでにぎわったが、今年の参拝者は10分の1以下だという。30年以上奉職する宮司も「こんな様子は初めて」と口にしている。

今月12日からは異例となる郵送での特別祈祷(きとう)受付を始めた。「お下がり」として、茅の輪のお守りなどが授与される。外出自粛要請が続き、東條さんは「ご参拝できない方がいらっしゃる。神社として何かできればと考えました」と説明した。【松本航】