新型コロナウイルスの感染拡大などの影響で不要不急が日常となってきて、巣ごもり生活も定着してきた。そんな中で“食の街”築地場外では詰め合わせセットを金額別に3種つくった。SNSから発信して、徐々に人気が出てきている。

詰め合わせセットを考えたのは、飲食を扱わない経木(きょうぎ)とお箸の専門店「小見山商店」だ。担当した看板娘の小見山明子さんは「こんなに反響があるなんて驚いています。もしかしたらウチの店で仕事をして、今が過去最高に忙しいかも」と仰天していた。

小見山商店は1923年(大12)に創業し、あと3年で100周年の老舗だ。おにぎりなどを包む木の皮、経木や割り箸などがかつての主力商品だったが、台所や食卓周辺の小物や弁当箱が海外の観光客からの評判が良く、近年は陶器の折り鶴の箸置きなどが人気商品になってきていた。

ところが、新型コロナウイルスのまん延から今年3月の売り上げは昨年同時期比で半分以下。明子さんは「何かをしなきゃいけないし、お客さんはまったく歩いていないし、何かこちらから世の中に仕掛けていかないといけない」と感じて、友人や知人の意見を聞いて、慣れないパソコンで小見山商店の商品9個を対象に通販サイト画面をつくって、自分の登録しているSNSで流してみた。それが4月11日だった。

明子さん もうまったく反応なし。友人がみかねて1件だけクリックしてくれた。インターネットの時代に乗り切れない、とショックしか残らなかった。

そこで、さらに友人数人に「築地場外に何を期待するか」「場外の商品で何がほしいのか」を聞いたところ「やっぱり、当たり前なんですが、食べ物なんですよね。そこで、自分でリストを作って何がほしいか、聞いてみたんです」と明子さんは振り返った。

築地場外で育ったので、かつお節や煮干し、その他にも野菜や肉、魚に関連した商品を無作為に並べてみた。

明子さん そうすると、もっとも要望として多かったのが魚の干物とギョーザとかシューマイなど。もしかしてすぐに食べられるものがほしいのか、と。それで自分の近所のお店に声を掛けた。ウチからマスク、消毒液、不織布の高級品「職人魂」を盛り込んで、それぞれ税別で3500円、5500円、1万円の3つの詰め合わせをつくって、SNSで売りに出してみたんです。

3500円には菅商店の肉ギョーザ、つきぢ松露の玉子焼き1/3サイズ、鳥藤(とりとう)の鶏もも肉、都(みやこ)水産のアジ干物。5500円はジャンボシューマイ、紀文のさつま揚げ、玉子焼きハーフサイズ、藤本商店のフルーツトマト、鴨上もも肉、鶏もも肉、極上アジ干物、塩サバを入れた。1万円はさすがに豪華で5500円のパックに肉ギョーザ、玉子焼き1本、富士ハムのすき焼き用の肉、鴨ローススライス、アマダイの干物が追加された。

明子さんも大きな期待はしていなかったが、初日で20件ほどの問い合わせがあって「正直、ビビった」と話し、23日まで計102件の申し込みがあった。

協力各店からも「不要不急に応えながら築地場外も知ってもらえる」「いいものは世間が認めてくれるんだなぁ」「人通りが少ないからやる気が出てきた」と好評だ。

注文が届いたら、翌日の午前中に品物を集めて、明子さんが手書きでどう食べたらいいかの説明書を同封して、正午前には搬送する。最高の状態で各店が保存、管理をしており、築地場外の品ぞろえの良さも知ってもらえる。

明子さん コロナには負けられない。築地場外のいい品物を食べてもらえば、普通の世の中に戻ったときに築地場外にまた人が戻ってきてくれると思っています。これから品物の内容も入れ替えて考えていきたい。

インターネットが不得意で、パソコンもほとんど使ったことのなかった明子さんが考えた「築地のオススメ詰め合わせセット」は、巣ごもり生活が長引くようであれば、さらに人気が出てきそうだ。