新型コロナウイルスの影響で、ふさぎ込みがちな人も多いだろう。そんな時、遊びながらマイナスをプラス思考に変えるツールがある。「人生よかったカルタ」だ。パナソニックの創始者で、経営の神様と呼ばれた松下幸之助さんも取り入れていた「陽転思考」をベースにしている。3年前に作成されたが、今回再注目され始めた。失敗や挫折など、一見ネガティブな出来事も、気付きや学習の場として自分の力にしていける。

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「人生よかったカルタ」は3年前、千葉県内の小学6年生の発想を基に「こども版」が作成された。昨年、「おじさん版」も作られたが、コロナの影響で学校が臨時休校になったのを機に、「こども版」が再びクローズアップされ始めた。

読み札と絵札に、ネガティブな言葉が描かれており、普通のカルタ同様に絵札を見つけた人が「よかった」と言って取るのがルール。取った人はなぜよかったのかを、ポジティブな言葉に置き換えてしゃべる。例えば、「ひ」の読み札が「ひとりで留守番させられてよかった」なら、絵札を取った人は「好きなテレビが見放題だった」と応じる。

このカルタの考案者は、和田裕美さん。外資系の教育会社で世界2位、日本トップの成約率を誇った「営業のカリスマ」だった。「最初はどこへ売り込みに行っても断られ続けた。嫌な気分で帰り、上司や先輩からのアドバイスもなく、失敗ばかりでした」という。

ある時、仕事がうまく行かなかったことは反省した上で、外回りをしていてよかったことを思い出すようにした。ランチのおいしそうなお店、好みの洋服のショーウインドーなど、よかったことを思い浮かべ、逆境をプラスにすることで、好結果を出し始めた。

これこそが「陽転思考」。「ネガティブに1回考える。現状を客観的に受け止めた後の思考回路は2通り。そのまま自らつぶれてしまってはいけません。ひと筋の光を見いだすように、どんな可能性があるかを自分で考える。それで気持ちが楽になったり、人間関係が改善されます」(和田さん)。

この思考の本は多く著されている。本は1人で読んで考える。カルタは複数で楽しむ分、いろいろな意見が出る。

「今回のコロナ騒動でウイルスより、ネガティブ思考に感染して、うつになったり、心がやられて生きる意欲を失うのが怖いです」と、和田さんは強調する。コロナ禍は、「心の持ち方」という脳トレの絶好機でもある。【赤塚辰浩】

◆人生よかったカルタ回答例

【こども版】

な:仲間外れになってよかった

例 よかった! 独りぼっちの人の気持ちが分かったから

よ:よかったが見つからなくてよかった

例 よかった! これから見つけてやろうと思えたから

【おとな版】

え:延々と愚痴を聞かされてよかった

例 よかった! 自分もハッとさせられる内容だったから

に:ニセモノをつかまされてよかった

例 よかった! 本物との違いが分かったから

【おじさん版】

い:家にまっすく帰りたくなくてよかった

例 よかった! 家の近所に安い飲み屋を見つけた

ね:猫と犬しか相手にしてくれなくてよかった

例 よかった! 猫と犬だけでもいてくれて