大阪府の吉村洋文知事(44)への注目度が、日に日に増している。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言が発令された4月7日以降、連日のテレビ出演。約1カ月で30回を超える。毎日のように取材にも応じ、国とのバトルにも参戦。多忙を極める姿にネット上では「#吉村寝ろ」というキーワードも飛び出した。コロナ対策で評価されるリーダー調査では断然の1位に。すっかり全国区になった吉村氏の「発信力」に注目してみた。

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吉村氏は9日夜、TBS系「新・情報7daysニュースキャスター」に生出演。休業要請に応じないパチンコ店名を公表した理由を矢継ぎ早に質問するビートたけしに淡々と対応し「なんとかコロナを抑え込みたい」と強調した。発信の場の1つが、テレビ。4月7日以降、NHK、民放の全国ネット、関西ローカルに出演し、1日3番組のはしごも珍しくない。

登庁時はぶら下がり取材にも対応。「できる限り情報を公開し、府民の皆さんと共有したい」と話す。

「大阪からの発信」といえば、橋下徹元大阪市長(50)が「先人」だが、吉村氏は攻撃スタイルではなく、粘り強い対話で合意形成を目指す「協調スタイル」。ツイッターなどSNSも駆使するのは橋下氏と同じだが、相手を徹底的に攻撃しない。「出口戦略」をめぐる国とのバトルでは、西村康稔経済再生担当相と1日で“和解”した。

橋下氏との共通点は多い。吉村氏は高校時代、ラグビーに打ち込んだ。ポジションは橋下氏と同じ左ウイング。2人とも弁護士から政界に飛び込み、吉村氏は双子の2女、1男、橋下氏は3男、4女の子だくさん。2人をつないだのは、タレントの故やしきたかじんさん。橋下氏はたかじんさんの後押しで08年大阪府知事選に出馬したが、吉村氏はたかじんさんの顧問弁護士時代に橋下氏と知り合い、政治の道を志した。

吉村氏がコロナ対策に奔走するようになって、ネットでは「#吉村寝ろ」の激励が拡散。これに吉村氏はツイッターに「政治家は使い捨ての方がいい」と投稿した。この言葉も政治家時代の橋下氏の口癖だ。これまでは知名度がネックとされた吉村氏だが、発信力は今や「全国ネット」。“橋下超え”も視界に入った?

毎日新聞の世論調査(6日実施)では、コロナ対応で「最も評価している政治家」として、2位の小池百合子東京都知事を引き離し、断然の1位。3位の安倍晋三首相の5倍近い数字。所属する日本維新の会の支持率も上昇傾向だ。

次の焦点は15日。休業要請などの段階的解除の是非を「大阪モデル」をもとに判断する。コロナ対応でブレークした吉村流発信力は、ますます注目されそうだ。【松浦隆司、星名希実】

◆吉村洋文(よしむら・ひろふみ)1975年(昭50)6月14日、大阪府河内長野市生まれ。府立生野高、九州大法卒。98年、司法試験合格。11年、大阪市議に初当選。14年に衆院議員にくら替えし、15年、市長選に政界引退の橋下氏から後継指名を受けて出馬し、初当選。知事・大阪市長のダブル選後の19年4月から知事。座右の銘は「意志あるところに道は開ける」。家族は妻と双子の2女、1男。