静岡・狩野川のアユ釣りが30日、解禁となった。当初は20日を予定していたが、新型コロナウイルス感染拡大防止のための政府による緊急事態宣言を受け、延期した。

狩野川漁協ではコンビニのレジなどを参考に、透明シートでの間仕切りを設けるよう、組合員が流域のオトリ店などに出向いて指導。金銭のやりとりやオトリアユを渡す際、マスクを着用し、入場者との社会的距離を保つようにした。ホームページでも、「密」の状態を避け、手指の衛生を呼び掛けるなどした。

異例の解禁となったが、待ちわびた約700人(狩野川漁協調べ)のファンが足を運んだ。日の出とともに思い思いの場所でアユの引き味を堪能していた。

開始当初は冷たい西からの風が時折強く吹いて肌寒かったが、日の出とともに気温も上昇。朝7時すぎには太陽が降り注ぎ、アユの追いも活発になった。

旭水園前よりやや下流にある人気ポイント、「吊り橋」付近でも多くの人がサオを出した。上流部に陣取った羽中田(はちゅうだ)修さん(58=山梨県富士河口湖町)は、「30年以上の狩野川の解禁日には来ているが、10数年ぶりにいい型がそろった」と笑う。朝4時30分から6時間足らずで10~20センチを35匹。5~6匹連続して掛ける時間帯もあった。「水中に群れが固まっているのが見えたが、小さかった。これが大きく成長して散らばり、縄張りを持てばもっと期待できる」(羽中田さん)。ソ上も多いと高かった前評判通りの釣果が、各所で聞かれた。

狩野川は、昨秋の台風の通過で川底に堆積していた土砂が押し流され、上流部から大きな石が転がってきたという。この大石にアユのエサとなるアカが付いた。従来あった石にもアカが付いて黒光りするなど、いい状態で解禁を迎えることができた。石に付着する緑色の藻「アオノロ」も見られるが、こちらはまとまった雨で流されれば、川の状態はより良くなるはずだ。

1日には静岡・興津川、山梨・桂川、神奈川・相模川、茨城・久慈川、栃木・那珂川などでも解禁が予定されている。盛夏に向け、今年も本格的なアユ釣りのシーズンを迎える。【赤塚辰浩】