将棋の藤井聡太七段(17)が、木村一基王位(46)への挑戦権獲得まであと1勝とした。

13日、東京・千駄ケ谷「将棋会館」で行われた第61期王位戦挑戦者決定リーグ戦最終一斉対局で午後7時5分、64手で阿部健治郎七段(31)を下した。6人総当たりの同リーグ初参加の藤井は、5連勝で白組トップ。紅組5連勝の永瀬拓矢叡王・王座(27)と、23日に同所で挑戦者決定戦(挑決)を行う。4日の第91期棋聖戦挑決に続いて永瀬二冠に勝てば、王位戦初登場となる。

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藤井が一気に踏み込んだ。激しい攻め合いから抜け出し、阿部を投了に追い込む。「少し自信がないと思って指していました」と述懐したが、棋聖戦挑戦者が終盤力の違いを見せつけ、突き放した。

初の王位リーグで5連勝。初戦で羽生善治九段を下すと、その羽生から王位を奪った菅井竜也八段、名人挑戦経験者の稲葉陽八段ら難敵を次々と倒した。「苦しい場面もあったと思う。勝てて良かった」。ちょっぴり顔をほころばせた。

直近の王座戦2次予選(10日、大阪市「関西将棋会館」)では大橋貴洸六段(27)に敗れ、20年度初黒星を喫した。「今まで経験したことのないスケジュールで大変でした」としながらも、ショックを引きずることなく修正してきた。

初のタイトル戦として、渡辺明棋聖(36)に挑戦する棋聖戦5番勝負をこなしながらの対局だ。1992年(平4)には当時21歳、四段だった郷田真隆現九段が、棋聖戦と王位戦に連続で谷川浩司現九段に挑戦した例がある。棋聖戦こそ1勝3敗で挑戦を退けられた郷田だが、王位戦7番勝負は4勝2敗。21歳6カ月で王位を奪い、最低段位の四段でタイトルを獲得した。ただ、史上最年少の17歳10カ月20日でタイトル戦に初登場した藤井には、それを上回る若さや勢いがある。

紅組からは、永瀬2冠がやはり5連勝で勝ち上がった。初顔合わせとなった4日の棋聖戦挑戦者決定戦に続いての激突。「前回、強さを感じました。その経験を生かし、しっかり指せるようにしたい」と張り切る藤井が勝てば、2つ目のタイトル戦挑戦となる。

王位戦は来月開幕予定。挑戦権獲得まで、あと1勝だ。史上最年少プロと、昨年の王位戦で46歳3カ月の「史上最年長タイトル初獲得」を記録した木村との頂上対決は、実現するか。【赤塚辰浩】

◆王位戦 将棋の8大タイトル戦(ほか名人・竜王・叡王・王座・棋王・王将・棋聖)の1つ。1960年(昭35)創設、初代王位は故大山康晴十五世名人。予選を経て、紅白各6人1組の挑戦者決定リーグを開催。トップがリーグ同星で並んだ場合は、挑決進出者を決めるプレーオフとなる。紅白各組のトップ同士が挑戦者決定戦を行い、勝者が挑戦者。タイトル戦は7番勝負の2日制で、先に4勝した方が獲得する。

【藤井七段、今月の対局日程】

◆20日 竜王戦3組決勝 杉本昌隆八段(大阪市「関西将棋会館」)

◆23日 王位戦挑戦者決定戦 永瀬拓矢2冠(東京・千駄ケ谷「将棋会館」)

◆25日 順位戦B級2組 佐々木勇気七段(同所)

◆28日 棋聖戦5番勝負第2局 渡辺明棋聖(同所)