千葉県館山市は24日、ZOZO創業者でスタートトゥデイ社長の前澤友作氏(44)が、19年にふるさと納税した寄付金20億円で設立した「前澤友作館山応援基金」を活用し、新型コロナウイルス感染症に対する緊急経済対策として、市制度融資枠を20億円から35億円に拡大すると発表した。

拡大に伴って必要となる追加予算2億6000万円については、同基金より追加拠出することを決定した。

「前澤友作館山応援基金」は、館山市が前澤氏の寄付金20億円を積み立てた「館山観光振興基金」を積み替える形で4月23日に設立。19年に千葉県を直撃した台風の被害に加え、新型コロナウイルス感染症の影響で疲弊した観光や地域産業を下支えする事業者の保護を目的に挙げ、市内の中小企業を対象に新型コロナウイルス対策として総額3億6000万円規模の緊急経済対策を実施すると明らかにした。具体的には「市制度融資の利子及び保証料の補給並びに返済元金助成事業」及び「中小企業等事業所家賃支援事業」を行っている。

そのうち「市制度融資の利子及び保証料の補給並びに返済元金助成事業」は、申し込み開始から1カ月半での実績が200件を超えるなど大きな反響を呼んでいる。この事業では、1カ月の売上高が前年同月と比較して5%以上減少している中小企業者等に対して、運転資金や設備投資のために事業者が受ける融資の利子及び保証料の全額給付並びに返済元金の10%の助成を実施する。返済元金の10%助成まで踏み込んだ事業は全国でも例がなく、館山市は全国の地方自治体のモデルケースとなることを目指している。

融資を取り扱う市内5行の金融機関での取り扱い実績は、6月22日現在で運転資金が222件で9億9510万円、設備資金が16件で1億7705万円、合計238件で総額11億7215万円に上った。館山市はその現状を受けて、市内5行の金融機関に事業者の借入ニーズについて調査を実施。最大20億円となっている融資枠に対し、35億円までの融資実行が見込まれるとの回答があったため、融資を必要とする事業者に広く行き届くようにするため、融資枠を総額35億円まで拡大することを決めた。

金丸謙一館山市長は「『前澤友作館山応援基金』を活用したコロナ禍での緊急経済対策だが、融資における返済元金への助成は調べた限り前例がなく、市内の中小企業の再建に大きな役割を果たしている。いまだ、事業者からの融資を希望する声が多く届く中、この取組みがより成果を発揮し、少しでも打撃を受けた市内の事業者の力になればと願い、融資枠の拡大を決めた」と説明した。

融資の申請期間は21年3月末日までとしており、館山市は融資を考えている事業者に対して、早めに金融機関へ相談に行くよう呼び掛けている。本補正予算案は、令和2年館山市議会第2回定例会最終日の26日に上程し可決成立を目指している。