将棋の藤井聡太七段が17歳11カ月の史上最年少で初のタイトルを獲得するか? 渡辺明棋聖(36)が1勝返すか? 第91期ヒューリック杯棋聖戦5番勝負第3局は今日9日、東京都千代田区「都市センターホテル」で行われる。決戦前日の8日、両対局者と関係者は、現場を下見した。注目の一戦を控えた両者はその後、会見に応じた。

すっかり雰囲気に慣れたかのような様子で、藤井は渡辺棋聖と盤、駒、座布団や照明の具合などをチェックした。タイトル奪取まであと1勝としているが、気負いはまったくない。「ここまで2局ともいい状態で臨めて、いいパフォーマンスが出せた」。言葉を慎重に選びながら振り返った。

20年度は、すでに12勝1敗と絶好調。掛け持ちで挑戦している王位戦7番勝負は今月1~2日の開幕局で、木村一基王位を押し切った。6日の順位戦B級2組2回戦も橋本崇載八段を一蹴し、棋聖戦第3局に弾みをつけた。

過密日程も苦にはしていない。対局が再開された6月は9局こなし、今月もこれで3局目になる。「状態を崩さず維持したい。今まで通り、気負わず臨みたい」と、あくまで目の前の1局に集中する。

対する渡辺も、かど番のプレッシャーは感じさせなかった。2008年(平20)には竜王戦7番勝負で3連敗の後、4連勝という大逆転劇で羽生善治の挑戦を退けて防衛している。

現在、名人戦に初めて挑戦しており、こちらもタイトル戦掛け持ち。初防衛を目指す豊島将之名人との開幕局こそ制したものの、2局目から連敗した。今月4日の王座戦挑戦者決定トーナメント準々決勝で行方尚史九段を下し、ようやく調子が上向いてきた。「ここまでいいところがないので、1、2局目よりはいい内容になるよう戦えれば」と話した。

対局は9日朝9時から、藤井の先手で始まる。【赤塚辰浩】