東京を中心に全国で新型コロナウイルス感染が再拡大する中、政府が22日に全国一律で始める観光支援事業「Go To キャンペーン」をめぐり、地方の首長らから批判や不安が相次いでいる。政府は、感染防止対策を宿泊施設に義務付けるなど、予定通りに実施する方針だが、防戦一方。ネットでも、批判が高まっている。コロナをめぐる安倍政権の肝いり政策が世論の声を受けて方針転換に追い込まれたケースもあり、今回も怪しい雲行きだ。

政府が“強行”しようとしている「Go To キャンペーン」に、地方の首長から疑問の声が出てきた。山形県の吉村美栄子知事は14日の会見で「首都圏での感染状況や各地での豪雨災害を踏まえると、この時期のスタートはいかがなものか」と、批判。経済対策として認めた上で「地域の実情に合ったやり方を地方に任せてほしい」と求めた。

埼玉県の大野元裕知事は、期待を示しつつも「まずはなるべく近場から始めてほしい」と呼び掛けた。

13日に「今までは天災と言っていられたが、もう人災になる」と強い調子で発言した、青森県むつ市の宮下宗一郎市長はこの日も「感染が拡大すれば人災以外の何物でもない。市民の我慢をぶち壊すのか」と指摘。「全国一律で開始するのはよく考えた方がいい」「観光客が来てほしいのはやまやまだが、今ではない」と訴え、市の観光施設閉鎖の可能性にも言及した。

和歌山県の仁坂吉伸知事のように「不安はあるが、リスクがあるから来るなと言うと(地域経済は)自滅する。コロナ禍でも稼がないといけない」と、理解を示す首長もいる。

ツイッターでも「Go To キャンペーンを中止してください」というハッシュタグの投稿が増え、一時、トレンドの上位に入った。高齢者の多い地方での不安の高まりや、豪雨被災地のボランティアが感染防止で県内在住者に限定されていることとの整合性を指摘する声もある。

世論の“包囲網”に、赤羽一嘉国交相は、宿泊施設やツアーに感染防止対策を義務づけると発表。地方の要望などを踏まえて早期開始の必要性を強調した。国交省は事業への登録時に対策を確認するが、現場で守られているかの確認も限界が予想され、混乱や不安は避けられない。

安倍政権では、国民への現金給付をめぐり世論の批判を受けて急転直下方針転換した経緯がある。安倍首相は14日夜、予定通り実施するか問われ「現下の感染状況、高い緊張感を持って注視をしている」とだけ話し、明言はしなかった。