「将棋の強いおじさん」木村一基王位(47)が14日、第61期王位戦7番勝負第2局で、手痛い星を落とした。優勢に局面を進めながら詰めを間違え、挑戦者の藤井聡太七段に連敗した。

昨年は連敗後に盛り返し、46歳3カ月にして初タイトル獲得を果たした木村は投了後、あきらめ切れなさそうに、しばらく天井を見上げた。「寄せ損ねてました。明快さに欠けた。(自分が詰みを)逃しているか、すでに逆転していたか。チャンスはあったと思う」。ファンの前でリップサービスするのが得意な王位が言葉を選びながら話した。

先手番の今局は、得意パターンに持ち込んだ。マラソンに例えれば、つかず離れず競技場まで走り続け、最後の最後に抜け出す形。第1局、序盤からドーンと飛び出して攻め切った藤井の得意パターンとは違う。「棋士は切り替えるのが仕事の1つ」。対局前日の会見のコメント通り、途中までは初戦の完敗などなかったかのような指し回しだった。

30歳差のタイトル戦。「将棋の世界で、年が上だということで得することは何もありません」と言い切る。13日の封じ手では、封筒に署名がないのを挑戦者に指摘し、先輩らしさを見せた。12日に札幌入りした際は「封じ手を3通にして、1通をチャリティーに」と提案。たとえ黒星が先行していても、2日制7番勝負初登場の藤井を向こうに回して、ファンサービスまで披露してくれた。

昨年の王位戦、タイトル挑戦7度目、46歳3カ月の史上最年長で初タイトルを獲得した。簡単に手放すわけにはいかない。その時も、2局目の札幌対局でミスをして逆転負けした。結果的に第7局までもつれ、●●○○●○○と大逆転で王位を手にした。

座右の銘は「百折不撓(ふとう)」。第3局に向けて「一生懸命、精いっぱい頑張りたい」と語った。藤井が生まれる5年前の1997年(平9)からプロとして活躍する「中高年の星」。最後まで、あきらめはしない。【赤塚辰浩】

<木村王位に聞く>

-先手番で相掛かりとなった。前例のない藤井七段の一手もあった

木村 (形勢は)あまりいいとは思いませんでした。ちょっと失敗したかなと感じていた。

-序盤、中盤は

木村 互角の流れではあった。

-手応えは

木村 常に一手間違えば、攻め込まれたり、飛車をとられたりした。

-形勢判断は

木村 ちょっと明快さに欠けた。

-最終盤は

木村 ちょっと寄せ損ねた。なんかあったかもしれない。見逃していたのかも。チャンスはあったと思う。

-第3局に向けて

木村 まあ、一生懸命、精いっぱい頑張りたいと思います。