政府が22日に始めた「Go To トラベル」が、医療体制が脆弱(ぜいじゃく)な離島で混乱の種になりつつある。鹿児島県の最南端にある与論島で22日から24日の間に23人の感染者が確認されていたが、25日、新たに6人の感染が確認され、与論町での感染者数は計29人になった。

島内で唯一、入院患者の受け入れが可能な「与論徳洲会病院」で院内感染が発生。感染者はこれまでに鹿児島市や奄美大島の医療機関へと海上保安庁などの航空機で搬送されている。

与論町は、新型コロナウイルス感染症対策本部長を兼ねる山元宗町長(76)が緊急で町のホームページを通じ、旅行者に対する来島自粛、島民への外出自粛を呼び掛ける事態に。「ヨロン島観光協会」は25日、日刊スポーツの取材に、約30ある飲食店の大半は休業したと説明。宿泊施設は予約をすべて断るか、事情を話して感染防止策を万全にして来てもらうか、各宿が対応を迫られているという。

昨年は7月に約6900人、8月に約7600人の観光客が島を訪問。観光の最盛期だが、高齢者が多く、医療体制も万全とは言い切れない島では、まずは経済より「命を守る」ことを重視せざるを得ない。今回のような混乱は、ほかの地方の観光地でも起きる可能性がありそうだ。