政府は7月31日、全国で新型コロナウイルス感染が拡大している状況を受けて専門家による分科会を開いた。

分科会では、現状の分析と評価が行われるとみられたが、地域の感染状況をレベル0~3の4段階に分けて対策を講じる案を政府に提言しただけで次の段階に移る予兆を把握するための「指標」は示されなかった。具体的な対策も来週以降に持ち越され、即効的な対応に期待した自治体の関係者は肩すかしをくらった格好。悠長な政府対応との乖離(かいり)が、浮き彫りになった。

分科会は、地域の感染状況を「ゼロまたは散発」「漸増(次第に増加)」「急増」「爆発」の4段階に分け、現在は、医療提供体制への負荷が蓄積する「漸増」状態と評価。東京都や大阪府が該当するとみられる。来週にも開かれる次の分科会では、「急増」に至る予兆を捉える指標を作成し、各自治体に示すとした。

分科会がまとめる「指標」は、感染拡大に歯止めをかける切り札と期待されるが、首相官邸が議論を主導した形跡は乏しく、専門家にげたを預けた格好。感染防止策が失敗した場合の批判の矛先を、「分散」させたい思惑もにじむ。

また、政府は重症者が少ないことなどを理由に、緊急事態宣言の再発令にも否定的だ。代わりに感染状況を4段階に分類し、都道府県ごとに「めりはりの利いた対策」を取る構えだが、先行きは不透明だ。

安倍晋三首相は31日、全国で感染が拡大している状況を「高い緊張感を持って注視している。陽性者の早期発見、重症化の予防が極めて重要」と指摘。「治療薬、ワクチンの開発と確保に努める。地方自治体としっかり連携を取り対応を講じる」と訴えた。