藤井聡太2冠に史上最年少での八段昇段を62年ぶりに更新された、「ひふみん」こと加藤一二三・九段(引退=80)が快挙を祝福した。同時に今後、名人への挑戦を目指す順位戦で、足踏みせずにA級へと上がることを要望。タイトル防衛に向け、戦法も増やすようにとのアドバイスも送った。

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数々の記録を塗り替えてきた藤井さんのことですから、2冠も八段昇段の最年少記録はあっさり更新すると思っていました。大変喜ばしいことです。

この調子で現在、在籍している順位戦B級2組を突破することが、本年度は最も大事なことでしょう。B2の対戦相手はくせ者ぞろい。ここをクリアできれば、名人が視野に入るでしょう。頂点に駆け上がるまで足踏みをせず、このままノンストップで21年度はB級1組、22年度はA級へと昇級してほしいです。

来春は大学に進学せず将棋1本とのことですが、それもいいでしょう。大学に行く以上、講義やリポートなどとの両立が厳しいでしょうから。私がみる限り、藤井さんは1日あたり5時間は将棋の研究をしていると思われます。研究肌の天才ですから、将棋に費やす時間を減らしたくはないはずです。

確か昨年の対局料と獲得賞金は、2108万円で第9位(18年は2031万円で12位)だったと記憶しています。この世界は上から10番目までにいれば「いい仕事」なのです。

立て続けにタイトルを奪い、来年は防衛がかかります。対戦相手もこれまで以上に研究し、対策を練ってくることでしょう。特に棋聖戦で不本意な負け方をした渡辺明さんをはじめ、豊島(将之)さん、永瀬(拓矢)さん、羽生(善治)さんらが「打倒藤井」の候補です。現在得意としている「角換わり」「矢倉」のほか、「ひねり飛車」「横歩取り」といった戦法も身に付けてほしい。

この先、AI研究がいかに隆盛を誇ろうとも、藤井2冠には人間の探求心と求道心の先にある芸術的な一手により、盤上での感動を追求し、将棋界をわかせていただけることを願っております。