東京・池袋の都道で昨年4月に乗用車が暴走し、松永真菜さん(当時31)と長女莉子ちゃん(同3)が死亡した事故で、自動車運転処罰法違反(過失致死傷)罪で在宅起訴された、旧通産省工業技術院元院長・飯塚幸三被告(89)の初公判が8日、東京地裁で開かれた。同被告は松永拓也さん(34)ら遺族に謝罪するも「アクセルを踏み続けたことはない。車に何らかの異常が生じたから」と起訴内容を否認し、無罪を主張した。

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国土交通省は高齢ドライバーなどによる事故防止策として来年11月から新型国産車を対象に自動ブレーキ搭載を義務化する。これまで大型トラックやバスなどに装備されていたAEBS(衝突被害軽減ブレーキ)が標準装備(輸入車は2026年7月、軽トラックは27年9月から)される。

車載カメラやレーダーで異常を検知して自動ブレーキなどで衝突回避、軽減を行うもの。国交省では「衝突被害軽減ブレーキなどの運転支援装置は、あくまで安全運転の支援」としているが、アクセルとブレーキを踏み間違えるなどの操作ミスによる事故抑止の効果に期待を寄せている。

警察庁が公表した昨年の75歳以上のドライバーによる死亡事故は401件で09年以来、ほぼ横ばいだが、池袋での暴走をきっかけに後付けタイプの「急発信防止装置」が売れている。発進時の異常なアクセル操作を検知して車を発進させないもので自動車用品販売の最大手オートバックスは「ペダルの見張り番」シリーズが、昨年5月に2500台を突破し、同8月には約4000台。同5月から今年9月までの累計では約2万1000台以上を売り上げた。「昨年4月以前は全国で月100台以下、50台ほどの月もあった。購入される方は60歳以上が約80%」(同社広報部)。

同社では本体と取り付け工賃込みで4万円(税別)だが、国や自治体の補助金が適用され、半額程度となるケースもある。コロナ禍で公共交通を避け、車利用の需要が高まる中、運転に不安を感じるドライバーや、その家族などに事故防止アイテムの注目度はさらに高まりそうだ。【大上悟】