菅義偉首相の天敵として知られる東京新聞の望月衣塑子(いそこ)記者が9日、都内で行われた出演映画「i-新聞記者ドキュメント-」(森達也監督)の再上映記念シンポジウムで、一部の番記者とパンケーキを食べながら懇親会を行ったことについて触れ、「密室の中でだけ説明しておけばいいや、ということが露骨にある方」と批判した。

望月氏は「菅さんは説明責任を果たしていくかと聞かれた際、国会にあまりにも拘束され過ぎて、行政の仕事ができない。官房長官は2回も会見をやっていると説明した。これは菅さんは説明責任を果たしたくないんだと。失言が多い中、安倍さん以上に説明責任は相当後退していくだろうと思う」と指摘。「オープンな場で首相が会見をすることを、メディアがしっかり求めないといけない」とも話した。

オープンな場での取材に応じない菅氏に対し、会見を開くよう求めた上で、“パンケーキ懇”を欠席した報道機関もあった。望月氏は密室の中での説明だと指摘した“パンケーキ懇”の背景について「結局、56人の記者が『パンケーキ懇』に参加してしまって。菅さんは踏み絵的にチェックしていたと思う」と推測。「上層部の指示で行った現場記者の中で、違和感を感じていた人もいると思う。なかなか1人で戦えないもの」と、一部参加者の複雑な胸中にも理解を示した。

また、菅政権を「人事独裁政権」と評した。菅氏が日本学術会議の会員候補の任命を見送ったことに触れ「安倍さんですら手をつけてこなかった。ついに学術の世界まできた」と指摘。さらに「共同通信の論説副委員長が首相補佐官になるなど、メディアも取り込まれている状況。人事独裁をより強化していこうという流れだと思う」と批判した。

望月氏は菅氏が官房長官時代、会見で森友・加計問題などについて激しいやりとりをしたことで知られる。会見にもかかわらず、菅氏から「あなたの質問に答える場ではない」と言われるなど目の敵にされ続けたことから、菅氏の天敵と言われるようになった。【近藤由美子】