群馬県みなかみ町の山間部に位置する温泉施設で、露天風呂に向かった宿泊客の男性がクマに襲われた。16日午前0時半ごろ、露天風呂に向かう敷地内で体長約1メートルのクマに腕や足など複数カ所をかまれた。男性は軽傷。旅館は対策に追われた。新型コロナウイルス禍の自粛生活から、GoToトラベルなどで観光地にも人出が戻りつつある中、コロナだけでなく、クマにも注意が必要だ。

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男性が、クマに左腕や右脚など数カ所をかまれた。クマはその後、その場から逃げていったという。男性は、旅館まで自力で戻り、妻が119番通報した。男性は軽傷を負った。

群馬県警沼田署によると、クマは体長約1メートル。ツキノワグマとみられる。沼田署の管内ではクマの目撃情報が、直近2週間でほぼ毎日続いていたという。クマと男性は鉢合わせたとみられ、その後は山に逃げたとみている。男性のけがは、長さ3~4センチの歯形をつけられて出血があり、旅館まで戻って、タオルなどで止血を行っていた。

旅館はクマによる宿泊客の負傷を受け、敷地内にドラム缶型のわなを設置し、木の実がなっている木を1週間以内にすべて伐採し、夜間の野外通路には工事現場用のライトを設置するなどの対策を決めた。クマが敷地内で出たのは今回が初めてという。

日本ツキノワグマ研究所の米田一彦氏(72)は「山間部にある温泉施設とクマの問題は、明治時代の時からある」と指摘する。「クマの餌となる木の実だけでなく、旅館はおいしいそうなにおいがするでしょう」と話した。「山から下りてくるクマは食料を求めているため、山間部に位置する旅館は特に対策が必要」と注意を促した。深夜の露天風呂を実施する旅館には「手持ちのライト、そしてクマよけの鈴など、人間がいることがわかるように知らせなければならない。1つ2つの対策ではクマはすぐに慣れてしまう。犬の鳴き声のスピーカーなどもあった方が良い」と話した。【沢田直人】

▽日本ツキノワグマ研究所の米田一彦氏 山の温泉地ではクマの生息地に人が入ってきているようなもの。もし、遭遇した場合に、絶対的な対応策はない。まずは、遭遇しないことが1番です。過去には男性3人がクマと鉢合わせた時に、頭を抱えて地面にうずくまる方法で、踏まれるだけですんだという例があった。しかし、クマは人を見て危険と判断したら、相手を抱きかかえようとするように飛び込んでくることがある。そのときに爪で首を傷つけられたり、脳挫傷を負ったりするのが一g番重症になるケースです。

◆本年度の主なクマによる人身被害状況

▼6月1日 岩手県で女性が襲われ、顔などに重傷

▼8月9日 長野県でキャンプ場に現れ、テント内にいた50代女性の足を引っかき、10針を縫うけが

▼同18日 岩手県で40代男性宅に侵入、窓ガラスを割り冷蔵庫や生ごみを漁あさる

▼9月6日 鳥取県で水路を清掃していた80代男性が左足をかまれ負傷

▼同30日 福井県で草刈りをしていた男性が、成獣のクマに襲われ約2週間のけが

▼10月1日 新潟県で3人が相次いで襲われる。うち70代女性が顔や頭をけがし意識不明の重体で療養していたが、同11日死亡

▼同2日 福島県で50代男性が、駅付近の住宅街で右手左足を引っかかれ軽傷

▼同7日 秋田県で80代女性が町道で襲われ頭蓋骨骨折の大けが。同14日に脳挫傷のため死亡