海と環境を考える参加型のイベント「東京湾大感謝祭2020」のオンラインによる生中継放送が17日、神奈川・横浜市の大さん橋ホールをメイン会場として発信され、解剖学者でミリオンセラー「バカの壁」の著者の養老孟司さん(82)が特別ゲストで登壇した。

東京湾大感謝祭は毎年10月に実施され、今年で8回目。2日間で約10万人を呼び込むことのできる人気イベントだが、今年は新型コロナウイルスのまん延が影響し、会場となっていた横浜赤レンガ倉庫での開催を断念、インターネットを通したオンラインでの実施となった。

日本テレビの桝太一アナウンサー(39)と釣りガールの秋丸美帆さん(31)が司会進行を務め、東京湾を研究テーマとした小学生、女子高生らが研究発表をするなどした。

養老さんは生放送の中盤で登場。落ちついた口調で、日本人の環境への考え方について「きちんとしすぎなので、もっと自然に接すればいい」との独自の論を提唱した。少ししゃべって、黙る、そして思い出したようにまたボソリとつぶやいて、発した言葉をかみしめるように口を閉じる、という連続だった。

桝アナは「とても味のある言葉で、無言のときにも何かを言われているようだった。これ、テレビの番組なら放送事故になる案件。でも、養老さんのお話は深くて次に何が言葉として飛び出してくるのか、緊張もしましたが、とても勉強になりました」と額の汗をぬぐった。

養老氏は「きちんとしすぎる日本人」についての発言の意味について「日本人はきれいにするのが好きなんです。ゴミがたまると掃除機をかけてきれいにする。でもそのゴミは掃除機の中で雑然としている。表面上はきれいだけど、問題が掃除機の中に移動しただけなんです」と解説した。

養老氏は中学、高校を神奈川県の栄光学園で過ごした。当時は横須賀市田浦に校舎があり「ほぼ毎日、海沿いを歩いて登下校していた。海は常に近くにある生活だった」と振り返り「なんで都会に住みたがるのか。自然の中にいて肩ひじをはらずに環境を考えていけばいいんだと思います」と何が何でもきれいにしていくという環境対策に「やりすぎるとよくない。私が妻と結婚したことも、今、生物は地球上で36億年生きながらえてきたことも全部なりゆきなんですから」と答えた。

リモートでつながっていた視聴者から「未来の東京湾はどうなるのでしょうか?」と質問されると「未来はどうなるか意外と分からない。どんな社会はいいかと言われてもそれは分からない。なにしろ、こっちはなりゆきで考えてますからね」とニコッと笑顔をみせてマイクを置いた。

桝アナが「今回は小学生も視聴していると思うんです。何かメッセージはありますか?」と水を向けると、養老さんは「今後、多分実現するのは、歳をとっても元気でいられること。元気で暮らせると、一生が長くなる。だから、もっと大きなことを考えてほしい。大風呂敷を広げよう」と訴えた。桝アナから「つまり、大きな夢をかなえる時間があるから、目標は大きく、大きくという解釈でいいですか」と尋ねられると養老さんは大きく首を縦に振った。

最後は東京湾大感謝祭の決めの掛け声を桝アナが先導し「東京湾」と張りのある声で投げかけると、養老さんも含めて全員で「ダー」と叫んで、「驚き」の「ワンダー」と掛けて締めくくった。