ジャーナリストの伊藤詩織さん(31)が、15年4月に元TBSワシントン支局長の山口敬之氏(54)から性的暴行を受けたと17年に実名を公表して明らかにした後、インターネット上で事実に基づかない誹謗(ひぼう)中傷の投稿により精神的苦痛を受けたとして、自民党の杉田水脈衆院議員(53)を相手に、220万円の損害賠償などを請求した訴訟の、第1回弁論(武藤貴明裁判長)が21日、東京地裁で開かれた。被告側は杉田氏、代理人弁護士ともに出廷せず、抗弁書を提出した。

伊藤さんは冒頭陳述で「国会議員は私たちの法律形成に大きく関わる人です」と切り出した。その上で、15年4月3日に山口氏と会食した際、意識を失い、ホテルで暴行を受けたと主張し準強姦(ごうかん)容疑で被害届を提出も、東京地検が16年7月に嫌疑不十分で不起訴とし、17年5月に不起訴不当を訴えるも、東京第6検察審査会も同9月に不起訴相当と議決したことに言及。「事件当時、私は酩酊(めいてい)状態で意識、記憶がないまま性行為をされていたため、私自身が被害の証明をすることは出来ません。私のようなケースは、他の重大犯罪と比べ、今の法制度の下では、法で裁いてもらうことが難しいのだと思い知らされました」と訴えた。

今回の訴訟は、杉田氏がツイッターで「もし私が、『仕事が欲しいという目的で妻子ある男性と2人で食事にいき、大酒を飲んで意識をなくし、介抱してくれた男性のベッドに半裸で潜り込むような事をする女性』の母親だったなら、叱り飛ばします」と投稿したことに対し、伊藤さんに対する誹謗中傷のツイートがなされた。それに、杉田氏がツイッターの機能の「いいね」を押したことが、名誉感情侵害に当たるとして提起された。

伊藤さんは、杉田氏の発言に対して「私にとっては、どれもセカンドレイプとなる」と指摘。その上で、同氏が自民党の会議で「女性はいくらでもうそをつける」と発言したとして非難を受け、謝罪した件についても触れ「今、まさに被害を告白したいと思っている人を黙らせ、また、親に『助けて』と言いたい人にもそれを言えなくさせてしまうものだと思います」と批判。「杉田氏が今後、同じような過ちを大切な人に対してしないで欲しいと心から願っています」と訴えた。