プロ縄跳びプレーヤーの“跳人”森口明利さん(31)が21日、名古屋市内で「縄跳び8重跳び」のギネス記録更新に挑んだが、失敗に終わった。自身が持つギネス記録「7重跳び」までは成功したものの「1、2発目は8・0に限りなく近いところまでいったんですが」と無念の表情。1度は「よし、いけたよね」と手応え抜群だった跳躍もあったが、映像判定によって認められず、会場からもため息が漏れる場面もあった。2度の休憩を含んだ計1時間28分間。最後は着地で左足首を痛め、自らバツ印。縄に使用しているワイヤによって、手足は切り傷だらけだった。

京大工学部、京大大学院を卒業後、一般企業でメキシコに駐在するなどエリートサラリーマンとして活躍していたが、「8重」挑戦に専念するために脱サラし、19年1月にプロ転向を決意した。昨年8月の1度目挑戦は「7・94」。この日も結果は出なかったが「子どもたちを含め、こんなに応援していただけることがうれしいし、1年間の進化は示せた。支えてくれる方たちの思いも背負っている。また挑戦します」。筋力、体力、集中力に加え「安定して速く回せることが大事。脳から信号を送る神経も鍛えないと」と分析した。

日本なわとびアカデミー(JJRA)、日本ジャンプロープ連合(JJRU)の理事として、縄跳び教室や、自身監修の縄跳び販売、小学校での出前授業などで生計を立てている。ロープに使用するワイヤ、持ち手など、今回使用した縄は1本約12万円。給料はサラリーマン時代の約半分程度で、道具やシューズ提供や体のケア、トレーニングなどに協力してもらっている感謝の気持ちにも背中を押されている。12月、来年1月は普及活動で予定ははいっぱいだ。「日本人の誰でもやったことがある縄跳びは、野球、サッカーよりも経験者は多いと思う。近い未来に五輪種目になる努力もしたい」。紅白出場が決まった女性アイドルユニットNiziU(ニジュー)が縄跳びダンスを振り付けに採用していることにも喜び「ダンスみたいな跳び方など、たくさんの技がある魅力も伝えてくれている。技の組み合わせを考えたり、体力や集中力や運動神経も養えるので、教育として生かしたい」。自身のギネス記録更新、教育的スポーツとして価値向上、そして五輪種目入り。次なる目標も揺るぎはない。【鎌田直秀】

◆森口明利(もりぐち・あきとし)1989年(平元)10月19日生まれ、福井市出身。藤島高、京大工学部を経て京大大学院エネルギー科学研究科修士課程。卒業後は車のシートなどに関連する企業に就職。19年1月にプロ転向。ギネス記録達成は17年に「7重跳び1回」、19年に「6重跳び連続4回」「5重跳び連続26回」。170センチ、61キロ。縄を回しながらの跳躍力は120センチ。縄跳びを持たない状態でジャンプすると両足が150センチの高さに届く。独身。血液型A。趣味は動植物鑑賞、滝巡り。愛称はもりぞー。

 

会場で応援した山本さゆりちゃん(10=森口さんとも一緒に練習経験があり、全国大会3位の実力者)「縄跳びは縄を自由に操れることが楽しい。森口さんが8重跳びに挑戦することで、みんなに興味を持ってもらえることはうれしいです。世界中に広まってオリンピックの種目になったらいい。私も日本でも世界でも1位になって金メダルをとりたい」