和牛を肥育する農業高校の高校球児ならぬ“高校牛児”が、牛への取り組みと肉質を競う全国大会「第4回和牛甲子園」(JA全農主催)が開催され、市来農芸(鹿児島)が総合最優秀賞となり連覇を達成した。

取組評価部門、枝肉評価部門でともに最優秀賞を受賞する完全V。春夏の甲子園など大会中止が相次いだ高校生の思いも背負い、コロナ禍による休校措置などの管理困難な状況も乗り越えた。大会はオンライン形式に変更されたが、過去最多33校47頭が参加して、丑(うし)年の年初をモ~り上げた。

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昨年度王者が“高校牛界”を牛耳った。「取組」ではハツラツとした発表で3年連続最優秀賞獲得。「枝肉」でも、初の頂点に立った。副主将を務める上田平夏美さん(3年)は「3年間、牛に青春をささげてきた。完全優勝が目標だったので最高にうれしい。自信を持つことも出来たので、これからも牛との挑戦を続けていきたい」。自身は牛や畜産の魅力を伝える教師を目指して進学するが、後輩たちの3連覇も願った。

繁殖から出産、育成や出荷までのすべてを経験するなかで、「甲子園」に向けての新たな挑戦が結実した。前回は優良牛がテーマだったが、「おいしい肉は健康であることが一番」と話し合って作戦変更。まずは病気をなくすことによる牛のストレス軽減を図った。尿石症予防のため、健康管理徹底に重点を置き、少しでも予兆があれば利尿剤を投与するなど、牛の“サイン”を見逃さなかった。配合する餌も、米ぬかからオレイン酸含有量の多いトウモロコシやきな粉に。ロースやバラの部位の分厚さや、均等な脂肪など、肉質の“得点”アップにも直結。大舞台で“特大ホームラン”を連発した。

昨年3月以降は新型コロナウイルスの感染拡大による休校や自宅待機も続き、牛との時間も制限された。担当教諭しか携われない時期もあったが、電話で連絡を密に。会えない期間が、牛への愛情をさらに深めた。配合飼料やハエ対策、牛舎改良など、他校のさまざまな発表も収穫だ。「コロナでいろいろな大会が中止になった中で、開催していただけたことに感謝。同級生も応援してくれましたし、支えてくれた地域の方やJA職員の方にも感謝したい」。鹿児島黒牛とともに、深紅の大優勝旗をギュ~とつかんだ。【鎌田直秀】

◆和牛甲子園 世界的に人気の高い黒毛和牛を育てている農業高校生徒の評価の場として、17年度から開催。高校生らしい工夫を凝らした育成から出荷までの過程を発表形式で競う「取組評価」と、2年から3年程度で出荷される牛の肉質を競う「枝肉評価」の2部門で審査。第1回は15校の参加だったが、33校に増加。第1回、第2回は飛騨高山(岐阜)が連覇。大会参加や他校との交流による将来の就農意欲や、知識、技術向上を図る目的を担う。