米国のトランプ前大統領が退任し、バイデン新大統領の4年間が始まった。異例ずくめだったトランプ氏の4年間は米国の政治に何をもたらし、バイデン政権が担う今後の4年間はどうなっていくのか。米政治史に詳しい東京外国語大学の金井光太朗名誉教授(68)に聞いた。

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トランプ氏は「我々は戻ってくる」と言ってホワイトハウスを去りました。現実問題として、24年の大統領選は難しいのかなと思いますが、今回の大統領選でこれまでの大統領選の候補者の記録を上回る7400万票を獲得し、勢力の根強さを示した。まさにポピュリズム政治の躍如です。ポピュリズムは民主主義をゆがめると批判されますが、ある意味、民主主義の進化とも言える。トランプ氏の4年は、米国の政治に新たなポピュリズムをもたらしたと考えています。

以前は、エスタブリッシュメントとされる「偉い人」が難しいことを言っていることを聞いて大衆はよく分からないまま票を投じるしかなかった。しかし、SNSなど身近なメディアで「私」を表明し、それに応える政治を要求できる時代になった。自分の「身近」な分かりやすい問題でアプローチする政治家はフェイクだろうが、熱狂的に支持する。ポリティカリーコレクトネスを振りかざす政治家はごめん被る「嘆かわしい人々」。この大衆が政治を取り戻したのがトランプ現象だった。

この急激な政治の変化の中で、民主党は左派的なポピュリズムに振り切れなかった。過激なサンダース氏で下層で見捨てられた大衆票をごっそり獲得することも可能だったのに、民主党のエスタブリッシュメントの保身から、バイデン氏に集約した。結果、圧勝できず、勝てたはずの上院議員選は決選投票の2議席を別とすれば民主党が負けました。

このポピュリズムは1歩間違えば今回の連邦議会議事堂襲撃まで行ってしまう。米国はポピュリズムを肯定的に捉え、肯定的な体制に育てることができるかどうかの瀬戸際にいる。新たなポピュリズムをプラスの政策につなげていけるか。できなければ第2の南北戦争にもなりかねません。

バイデン氏は「偉い人」の側ですが、議会生活も長く、バランスがとれる。左派ポピュリズムの力をうまく取り入れながら、共和党の賛成もうまく取り込む。就任会見で分断を乗り越えると訴えたのは実はバイデン氏自身のためにも必要なことなのです。

新たなポピュリズムの時代の良きデマゴーグとなり得るのが、トランプ氏とやり合っても遜色ない過激さを持ち熱狂を起こす「民主党のトランプ」となるかもしれないアレクサンドリア・オカシオ・コルテス下院議員です。優秀な成績で名門大を卒業した後、18年に29歳で当選するより以前は、ウエートレスとして働き、大衆に飛び込み、巻き込み、SNSを使いこなすポピュリズム政治を実践している。多文化の背景を持つカマラ・ハリス副大統領も活躍が期待できます。今後の4年間の鍵になってくると思います。