北朝鮮に拉致され、いまだに解放されていない横田めぐみさんをモデルにした映画「めぐみへの誓い」が19日、秋田・ALVEシアターなど全国6館で公開された。

この日、神奈川・横浜市のシネマ・ジャック&ベティにはメガホンを握った野伏翔監督(69)、めぐみさんを演じた菜月(22)、横田夫妻役の原田大二郎(76)、石村とも子(62)、そして北朝鮮の工作員のリーダー役の大鶴義丹(52)が上映後、登壇した。

製作資金はクラウドファンディングで募り3カ月で5501人から約7300万円が集まった。エンドロールでは出資者全員の名前がスクリーンに映しだされた。

めぐみさんの父滋さんは昨年6月他界した。原田は「今まで演じた芝居とは180度違いますね。ただ、私もこの年になって、ようやくたどり着けた役だと思っています。演技をするというよりも、撮影中は横田滋さんとして生きていられたことを誇りに思う」と話し「できれば、いろいろな国の映画コンクールに出品して、世界のみなさんに拉致の真実を知っていただきたい」と訴えた。

滋さんとはリハーサルで1度面会している。稽古場の玄関まで出迎えたときに車から降りて、滋さんが地面に左足をついたときに「ああ、この足がめぐみさんを長い間待っていた足なんだなぁと深く心に刺さりました。その滋さんの佇(たたず)まいから察するものを感じた。だから、自然と撮影に入っていけました」と思い返した。

主役のめぐみさんを演じた菜月は「日本人なら誰もが知っているめぐみさんだけど、でも誰も会ったことがない。拉致の怖さをこの映画で知っていただけたら…めぐみさんたち拉致被害者全員を助け出せたら」と願いも込めて話した。

主な撮影は昨年3月に秋田県内で約1カ月で撮り切った。野伏監督は「昨年は4月7日に新型コロナウイルスの感染拡大で緊急事態宣言が発令された。その前に撮影ができたからこそ、この映画が完成した。何かのご縁なのかもしれない」と話し「昨年は暖冬で雪が少なかったのことが幸いした。天候も晴れ、雨、雪とすべての季節の様子をおさめられた」と振り返った。最後に「この映画は本日をもって我々の手から離れました。これから多くのみなさんにみていただいて、拉致被害者全員を救出できるように。映画ができてこれからが正念場です」と口を真一文字に結んだ。【寺沢卓】