震災の発生直後、岩手県大槌町の避難所で出会ってから10年。保育園児だった小松倫子ちゃんは、空手に熱中する13歳の少女に育っていた。

小学校入学と同時に始めた空手。昨年、黒帯をとり、岩手県内の大会(中1女子個人)の組手部門で準優勝に輝いた。「空手に集中したい」と3歳から習っていたピアノはやめた。組手と形の2種目のうち「自分で考えて、いろいろな技を出せるところが面白い」と組手に力を入れている。好きなタレントを尋ねると「興味ないっす」。芸能人に憧れる年ごろのはずなのに、思いは空手1本だ。

母広子さん(41)も空手教室の稽古に立ち会い、「ここがおかしい」などとアドバイスを送っている。「筋トレもストレッチも三日坊主だったのに、最近は毎日やっている。人から見えないところでも努力をしないと強くなれない。そのことがやっと分かってきたみたい」と期待を寄せた。

倫子ちゃんの好きな教科は「算数と理科」。理由を聞くと「(暗記でなく)自分で考えてできるから」。組手を好きな理由と同じだ。自身の頭で考え、試行錯誤を繰り返しながら成長を遂げている。

「今しかできないことを楽しみながら頑張って欲しい。『文武両道』という言葉があるけど、倫子はもっとできるはず。空手も勉強も」と広子さん。リモート取材の最後の言葉は“二刀流”に励む愛娘へのエールだった。