東日本大震災からの歩みを人工衛星で宇宙から解析したデータなどを8日、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が公表した。陸域観測技術衛星「だいち」シリーズ(だいち=運用終了、だいち2号)など、複数の人工衛星が電磁波などを使って離れたところから探査する「リモートセンシング」技術を駆使して、地表面の詳細を観測した。

福島第1原発がある福島・浪江町は、震災前に青で表示された水田が大きく広がっていた。5年後には、ほとんどの水田が消失、黄色の草地や荒れ地に。「農地だったり、市街地だったりしたところが荒れている様子をとらえている。10年後には大型のソーラーパネルが設置されているのが確認できる」と、第1宇宙技術部門地球観測研究センターの田殿武雄氏は解説する。その上で「福島第1原発の北側には赤い領域が増えているのが確認できる。廃棄物の仮置き場が広がっている」と、分析した。

三陸沿岸部の気仙沼市や陸前高田市では津波の被害によって拡大した荒れ地が震災から5年後も確認されていたが、現在は整備が進み、大がかりな護岸堤防の建設が確認される。宮古市田老付近では津波で裸地となった市街地の復旧が進み、防災集団移転促進事業で高台に新たな市街地が形成されていることも、はっきりと分かる。

人工衛星は高度600キロ以上で地球を周回し、午前0時と、正午の1日2回、日本上空を通過する。復興は今も道半ばだが、少しずつ、かつての姿を取り戻そうとする被災地の様子を天空のかなたから、最新鋭の人工衛星が、これからも見守り続ける。【大上悟】