2016年7月に入所者ら45人が殺傷された知的障がい者施設「津久井やまゆり園」(相模原市)の遺族や被害者家族が13日、東京パラリンピックの採火場所の変更を求める要請書を相模原市と神奈川県に提出した。20日までに具体的な回答を求める。市側や県の対応に不服な場合、大会組織委員会の橋本聖子会長などへも要請書を出す可能性があることも明かした。

要請書を出したのは、犠牲者の1人「美帆さん」の代理人を務める滝本太郎弁護士、事件で重傷を負った尾野一矢さんの父の剛志さん、被害者家族らと交流を重ねてきた静岡県立短期大学部の佐々木隆志教授。3人は「パラリンピック(障害のある人達のスポーツの祭典)を津久井やまゆり事件とを結びつけるのは無理がある」などと指摘し、会場変更を強く要望した。

市は昨年10月の関連会議で、やまゆり園を選ぶ方針を決定。今年2月には県と同園の指定管理者との3者会議で合意した。その後、大会組織委に伝えられ、3月末にパラリンピック採火場所の一つとして発表された。

要請書を出した尾野さんは「寝耳に水で憤りを隠せませんでした」と振り返り、何ら説明がないまま県と市が一方的に決定したことを問題視。「運営に関わる皆さんが厳かに、粛々と行うと言っても、いろんな方々がイベントに来る。お祭りのようになってしまうのではないか」と懸念した。 滝本弁護士は「パラリンピックは成功してほしいと思うが、鎮魂の場であるやまゆり園が採火場所はそぐわない」。佐々木教授は「世界に発信するために利用されただけではないか」と訴えた。

この日は本村賢太郎市長は出席せず、市側の担当者が応対。「至らぬ点があったことを心からおわびしたい」と話し、要望を踏まえて検討するとした。