コロナ禍のゴールデンウイーク(GW)の4日、東京湾に注ぐ旧江戸川河口で民間のプレジャーボートが座礁し、緊急通報を受けた海上保安庁や東京消防庁が出動して、子ども4人を含む11人が救助される事故が発生した。けが人はいなかった。

海上保安庁などによると、4日午後3時10分、男性からの110番通報で「船が座礁して動かなくなった」との救助要請があった。現場は東京ディズニーランド(千葉・浦安市)の西側を流れる旧江戸川で、東京都との県境となる河口付近。ディズニーリゾートのオフィシャルホテルの1つであるヒルトン東京ベイの沖になる。船が浅瀬の砂地に刺さるように埋まってしまい、動かなくなったもの。

千葉県警から海上保安庁第3管区保安本部(横浜市)に海の緊急通報先である118番通報された。東京海上保安部(江東区青海)から救助隊が出動し、午後3時35分に事故現場に到着した。

プレジャーボートは、操縦席が屋根の上にもある「フライングデッキ」タイプのモデルで、全長40フィート(約12メートル)だった。乗員は大人7人(男性4人、女性3人)、子どもは4人(女児3人、男児1人)計11人だった。詳細は不明だが、ボートのオーナーと家族ぐるみで付き合う複数の家族で東京湾をクルージングする目的だったと思われる。ボートが東京湾に出て行くのか、戻ってきたのかも判別できていない。

東京海上保安部が同6時40分、全員を救出して葛西橋臨海公園の水上バス桟橋に11人全員を無事に上陸させた。

この日の浦安市の満潮は午前8時39分で、もっとも水深の確保できる干潮は午後5時15分だったので「潮の満ち引きからだと、深さもあって安心して河口の状態をちゃんと確認していなかったと思われる」と東京海上保安部広報担当は話している。

旧江戸川の河口付近は上流から流れ出る土砂が堆積して、航路を読み取らないと「満潮でも座礁してしまう箇所がいくつかある」(東京海上保安部)危険なエリアが点在している。

浦安の釣り船と屋形船「吉野屋」の吉野眞太朗代表(70)は「あの付近は時間によってはプロの私たちでも座礁してしまうため、潮の加減では航行できない時間もあります」と話し「なので、中川というバイパスのような川を経由して荒川に至るルートを選ぶこともあるけど、たまにしか操縦しない一般の方には分からないかもしれませんね」と解説した。

毎日、現場付近を航行する吉野屋によると、2011年の東日本大震災で川の地形が変わり、深く航行できる場所と浅く隆起する場所が入れ替わってしまったという。浦安市が浅瀬付近に危険を知らせるブイを打っているが「どの程度認識されているかは不明」と吉野屋では話す。

事故を起こしたボートは「しっかりと固定されている状態」(東京海上保安部)ということもあって、そのままの状態。吉野代表は「今までも危険な状態なので浚渫(しゅんせつ)して砂を掘ってほしいけど、県境で東京都も千葉県も動いてくれない。今回はけが人がいなかったが、いつ大事故になるか分からない」と話して、ひと息いれて「もし何か災害があって、橋が落ちたら、ウチの屋形船や釣り船を出して救助したり、物資を運びたいけど、あの川の浅さでは何もできなくなるかもしれない。一大事に備えて国に動いてほしいですね」と訴えた。【寺沢卓】